平成12年7月28日
武蔵野市福祉保健部 障害福祉課
課長 江畑 五郎 殿
「ここだよねっと」(障害児のための位置検索端末実証実験)使用前アンケートの報告
イナッフ・フォア・トゥディ?
岡部耕典
考察
意図的に学童期を中心に「必要とおもわれるひと」ということで募集したので、小学校低学年が多く集まった。従って、これが、必ずしも、サービスを必要とするひとの分布と一致するわけではないと考えられるが、多くの知的障害児において、幼稚園年中から小学校低学年にかけての間、特に身体の発達及び活動性の活発化と、精神発達及び言語の発達が極めてアンバランスで、保護者にとっての行動管理当事者の安全の確保困難な時期と一致していると思われる。
対象は、自閉症スペクトルの子供が圧倒的である。(87%)
さらに、男子が圧倒的(87%)であることは、自閉症の男女分布よりも、やや強く、男子の方が活動性が強いことが影響しているのかもしれない。
愛の手帳度数は、重度・中度(2度3度)中心(計66%)だが、重度・中度のひとのみが必要性を感じているわけではなく、手帳もっていないひと、軽度のひともかなり(計34%)応募していることは、「自閉性・自閉傾向・アスペルガー」という比率が、26%をしめるということとともに、貸出基準を手帳の度数とすることに慎重な検討が必要なことを示唆している。
子供の居場所がわからず心配することが多い人およびこのサービスを必要・是非必要とするひとの比率が極めて高く(それぞれ、78%、100%)このサービスを公的機関が提供することを全員が要望している。
ただし、公的機関のサービス提供を、「無料・安ければ安いほどいい」とした比率は、少なく(13%)一定の費用負担を前提にしたうえでの公的機関のサービス提供要望であることから、その真剣さ、切実さが垣間見えるようである。
しかし、その場合の費用負担は、月間1000円までというのが56%を占め、決して高額な負担は望まれてはいない。これには、障害児の保護者が、レスパイト等含め様々な費用負担があることに加え、「居場所がわからず困ったことがない」というひとも一定数(22%)参加していることからわかるように、保護者の潜在的不安の強さ、またそこに対する「お守り的効果」の期待、逆にいえばそこにかけられる金銭的負担の限界を感じさせる。
公的機関によるサービス提供について
平成12年度よりの国の高齢者施策として、「家族介護支援特別事業」が始まり、市町村を通じて、徘徊高齢者の位置検索端末使用について、月間6000円の補助がでるようになった。また、武蔵野市、三鷹市をはじめ、高齢者用の機器貸出を検討、決定しているところも多い。
そのなかで、高齢者だけでなく、障害福祉への応用、それも、その中でも最も手薄といわれる学齢期の自閉症・知的障害児に対する「生活支援事業」としての適用にも、道を開いていただきたい。彼らと家族のニーズは、このアンケートの簡易調査にも明らかなように、大変切実、緊急、具体的である。
また、一定程度の負担を前提としても、配備を希求する真剣さも持ち合わせている。
元来、位置検索端末自体に、高齢者の使用、障害児(者)の使用に対する本質的差は存在しない。
今回武蔵野市が、徘徊高齢者向けに配備が計画されている位置検索端末が、貸与対象として広く障害者(児)にも開かれたものになれば、最小の費用と管理負担で、高齢・障害福祉の双方、それも、最も今後の対応が必要といわれる痴呆高齢者と障害児生活支援の両分野で成果をあげることができる。
高齢・障害・児童の福祉の基礎構造の一元化の流れのなかで、具体的なインフラ整備についても、可能なものは一元化が計られて当然なのではなかろうか?
サービス提供の留意点
障害児も対象とした生活支援事業として考えた場合、アンケート結果踏まえて、以下のような留意点が挙げられ、考慮されるべきと考える。
機器貸与費用は、月1000円程度以内。しかし、必ずしも無償である必要はない。
貸出資格は、「(多動等の要因により)機器を必要とするもの」とすべきであり、必ずしも、障害の種類、障害手帳の度数、有無で判断すべきではない。同様に、移動時に特に必要という特性を考えた場合、武蔵野市在住者だけでなく、ひろく通学者、通勤者も貸出し対象にいれることが望ましい。
第一回目モニターアンケート (抜粋)
性別
男 20人 (87%)
女 3人 (13%)
年齢
6才 1人 ( 4%)
7才 7人 (30%)
8才 6人 (26%)
9才 1人 ( 4%)
10才 4人 (17%)
11才 1人 ( 4%)
13才 1人 ( 4%)
17才 1人 ( 4%)
48才 1人 ( 4%)
障害の種類
自閉症 11人 (48%)
自閉性、自閉傾向、アスペルガー 6人 (26%)
自閉傾向・知的障害、自閉症・知的障害 3人 (13%)
知的障害、知恵遅れ 3人 (13%)
「愛の手帳」度数
1度 0人 ( 0%)
2度 8人 (35%)
3度 7人 (31%)
4度 4人 (17%)
もっていない 4人 (17%)
子供の居場所が解らず心配することがあるか
年に数回ある 9人 (39%)
月に数回ある 5人 (22%)
週に数回ある 4人 (17%)
まだない・ほとんどない 5人 (22%)
位置情報サービスにどの程度必要性を感じるか
1不必要 0人 ( 0%)
2(あまり必要ない) 0人 ( 0%)
3どちらとも言えない 0人 ( 0%)
4(必要) 8人 (35%)
5是非必要 15人 (65%)
位置情報端末を公的機関等が、福祉補助具として貸し出すことを望むか
希望する 23人 (100%)
希望しない 0人 ( 0%)
公的機関が貸し出す場合の費用負担額はどれくらいが適当か(月額で)
無料・安ければ安いほどいい 3人 (13%)
1000円以下 3人 (13%)
1000円 7人 (30%)
1500円 2人 ( 9%)
2000円 3人 (13%)
わからない・無回答 5人 (22%)