平成12年10月4日

                        

武蔵野市福祉保健部 障害福祉課

課長 江畑 五郎 殿

 

「ここだよねっと」(障害児のための位置検索端末実証実験)中間アンケートの速報

  〜位置検索の実用性・精度を中心に〜

 

イナッフ・フォア・トゥディ?

岡部耕典

実施方法

 

質問紙の郵送および返送による(無記名)

 

質問紙

 

別途添付の様式

 

調査期間

 

9月20日から末日頃

                           

母集団属性

 

性別

 

男                                   20人    (87%)

                                     3人    (13%)

 

年齢

          6才                                   1人    ( 4%)

          7才                                   7人    (30%)

          8才                                   6人    (26%)

          9才                                   1人    ( 4%)

          10才                                 4人    (17%)

          11才                                 1人    ( 4%)

          13才                                 1人    ( 4%)

          17才                                 1人    ( 4%)

          48才                                 1人    ( 4%)

 

     

障害の種類

 

自閉症                                          11人    (48%)

自閉性、自閉傾向、アスペルガー                   6人    (26%)

自閉傾向・知的障害、自閉症・知的障害            3人    (13%)

知的障害、知恵遅れ                           3人    (13%)

 

「愛の手帳」度数

   

1度                                             0人    ( 0%)

2度                                             8人    (35%)

3度                                             7人    (31%)

4度                                             4人    (17%)

もっていない                                    4人    (17%)

     

 

子供の居場所が解らず心配することがあるか

   

年に数回ある                                     9人    (39%)

月に数回ある                                    5人    (22%)

週に数回ある                                     4人    (17%)

まだない・ほとんどない                           5人    (22%)

 

 

趣旨

 

 武蔵野市障害福祉課より希望があった位置検索の実用性・精度関連の下記テーマ含め第二回調査の結果の要旨を報告する。

      位置検索の誤差

      位置検索の場所による差

      位置検索を複数回おこなった場合の精度の向上

 

詳細の分析が位置検索システムを障害者・児へ導入する際の判断に必要になる場合には、別途少人数においての実験を検討するので連絡をいただきたい。

 

調査分析

 

 回答者(有効回答21通・返送なし2名、未使用1名除く)においての回答結果は以下のとおり。

 

実験期間(約2月)のうちの検索依頼回数

 

          1〜 5回                   19人    (90%)

           〜10回                    1人    ( 5%)

           〜20回          0人

          それ以上                      1人  ( 5%)

 

ほとんど(90%)は、5回以内の使用である。かつ、5回未満の使用者のうち、16人(76%)は、「テストで使ってみた、もしくは、このアンケートに答えるためにつかってみた」モニターであり、実際の失踪においての使用ではない。

ただし、母集団の属性として「子供の居場所が解らず心配することがある」としたもので、「月に数回以上」としたものは、39%であり、「年に数回」の39%とあわせ、2月間という期間で考えてみてもかなり少ない。これは、失踪自体が、少なかったのか(機器をもつことでの「お守り効果」等が考えられる)実際には失踪しても機器を使わなかった・使えなかったのか(これは、常時携帯することの困難さ等に起因することが考えられる)は、第三回目の最終調査で検証が必要であろう。

いずれにせよ、本来このサービスを強く渇望し(必要・是非必要あわせて100%)かつ、実際に行方不明になる利用者を抱えた(年に数回以上行方不明になるのが72%)家族が対象でありながら、検索サービスの利用についてはそう使用頻度が高いものではなく、検索料金を市側負担とした場合でもその突出の心配はなさそうである。

 また、1名ではあるが、20回以上の突出した利用者がみられた。(「40回程度」と添え書きがあった)

この利用者は唯一の成人であり、強い放浪癖があるといい、自由記入欄に「とても有効」とのコメントがあった。一部「ヘビーユーザー」(それだけ利用価値も高いということだが)も念頭に入れる必要があるだろう。

 

位置情報システムの有効性

 

前述のように、位置検索自体の頻度は、全般的に余り高くなかったが、システム自体の有効性については、高い評価が得られている。

       

大変有効                     8人      (38%)

かなり有効                   8人      (38%)

どちらともいえない           5人      (24%)

あまり有効でない             0人      ( 0%)

全く無効                     0人      ( 0%)

 

これは、下記のモニター開始前のアンケートに比べれば、「期待と現実」には若干の差があることを示している。(どちらともいえない 0%→24%  是非必要 65%→大変有効 38%)

 

位置情報サービスにどの程度必要性を感じるか(第一回アンケートより)

  

不必要                                 0人    ( 0%)

あまり必要ない                        0人    ( 0%)

どちらとも言えない                    0人    ( 0%)

必要                                  8人    (35%)

是非必要                              15人    (65%)

 

 しかしながら、使用体験後、かつ平均の検索頻度がそれほど高くないにも関わらず、「あまり有効でない」、「全く無効」という評価が、0%で、「大変有効」「かなり有効」の計が76%ということは特筆すべきことであり、「お守り効果」も含めた主観的有効性は充分検証されているといえる。

 

検索依頼してから回答までの時間

 

〜 1分                      1人    ( 5%)

          〜 2分                      6人    (29%)

          〜 3分                      4人    (19%)

          〜 4分                      2人    (10%)

          〜 5分                      7人    (32%)

          〜 6分                      0人    ( 0%)

          〜 7分                      1人    ( 5%)

 

 過半数(53%)が、「3分以内」、7分以上かかったモニターはいないという結果になった。自らも携帯電話もち、捜索しながら、リアルタイムで位置検索を何度かおこなっていくというかたちでの捜索方法を前提にした場合、かなり実用に耐える探索時間といえるであろう。

 ただし、現状では、5分が32%、7分が5%と、5分以上にもばらつきがあり、捜索しながらの検索を前提とした場合、高齢者ではなく活発な子供が移動するスピードを考えると、ばらつきなく3分以内に納めてほしいところであろう。

 3分以下に対しても、「(地図みながら、電話かけっぱなしで探せるように)リアルタイムで知りたい」の記入(1名)もある。

 探索をおこなったエリアによってかかる時間に差があるかどうかのついては、検索場所の調査のデータとのリンクないので判明しない。

 

捜索結果の精度

 

 記入形式なので、回答あった全員(19人)の要旨を分類のうえ列記する。(分類枠は事後作成のものである。)

 

正確であり満足                 5人    (26%)

 

ほぼ正確と思われる。

正確。

確実。

かなり正確にわかりました。

正確であった。

「〜丁目」という回答で、正確でした。

 

ばらつきがある                 4人    (21%)

 

正確なときもあるが、違うときもある。

場所によってかなり精度がいい個所とかけはなれているところあり。

受信できるところ(アンテナ)が多いところは極めて正確。少ないところはもう少し詳しいほうがよい。

広範囲だったときと、特定されていたときがあった。

 

もうすこし正確さ・確実性がほしい   4人    (21%)

 

住所としては正確だが、場所は(もっとこまかく)特定してほしい。

毎回50mほどの誤差があったと思う。

建物内にはいっていたので実際は電波が届かず場所が探索できなかった。

1回目・電波の届かないところ、2回目・50m以内の精度。

 

正確性に不満                   6人    (32%)

 

番地があっていなかった。本当に探したいときは見当違いになるかも。

回答があった場所とはかなり離れていた。

間違っていました。公園のなかにいたのに、「外」といわれた。

少し漠然としていてあまり役にたたないと感じた。

○○丁目までしかわからなかった。

自宅に端末を置いていたのに、200mぐらいはなれたところを言われた。

 

  正確性の満足度については、主観的要素が高いように感じられるが、主観的な満足度では、ほぼ2分されてしまったようなかんじである。

ただし、不満な場合でも、物理的精度自体は公表性能の範囲内にほぼ収まっているようである。

 一部レポートにあるような「違った場所(番地)をいわれた」ことについては、オペレーターのデータ解釈に起因する点が大きいと創造されるが、探索という具体的シチュエーション想定した場合、重大な捜索ミスにつながる怖れもあり、注意が必要であろう。

 また、同様に同じ精度のデータの解釈においても、より探索しやすい指示パターンの工夫することが可能であるだろうし、主観的満足の向上には有効と想像される。

 アンテナ密度を含めた地域と探索結果の正確性の相関についてはこの調査ではあきらかにならない。それを測るにはこのようなモニターによる主観的調査でなく、同一基準をもってしてのインテンシブな客観的調査が必要であろう。

 

複数検索での検索精度の向上

 

 今回の実験および公式質問紙においては、そういう項目立てがないので、データはないが、個別的には、いくつかの報告がある。

それによれば、「位置の精度を高めるためには立て続けに何回かの検索依頼をかけることが極めて有効な場合がある」ということである。特に対象が移動中の場合、数回の検索のなかで、あまりはっきりした場所がわからないときとかなり正確な場所の特定ができるときとがあるようである。これについては、基地アンテナの場所と検索端末との位置関係の変化、探索データとロケーションのマッチングがしやすい地形かどうか、オペレータのデータ解釈と表現のぶれ、等の理由が考えられるが、いずれにせよ、探索者も移動しながら携帯電話等で繰り返し位置確認をおこなっていく探索形態が有効であり、現時点での基本形であると考える。

そのことからいえることは、以下のようなことであり、今後の機器選定やシステム向上のために留意されるべきであろう。

 

・ ファックスやパソコンでの位置データ出力でなくオペレータ形式の検索システムが必須である。

・ 回答は、可能ならば、リアルタイム(30秒以内)で、携帯をかけながらの連続検索ができればなおよい。

 

まとめ

 

 今回中間調査により、検索能力等については、モニターからの比較的厳しい目が向けられ、物理的・人的なシステム向上が期待されるものの、位置検索システムの必要性については、極めて高い水準で推移していることが改めて明らかになった。

 以降については、今回の障害児の家族をもつ市民による「ここだよねっと」の実証実験をもってして、障害者・児に対する位置検索システムの必要性と配備については充分に検証されたと思うので、次には市からの配備を前提にした採用機器の選定という段階で、複数メーカーからのデータ収集および必要ならば同一環境下での実験がおこなわれるべきであろう。

 今回の「ここだよねっと」の実証実験は、本来、「位置検索システムの必要性・有効性の検証」「装着や機器改良へのデータ収集」を主眼とし、それをもって、福祉機器として、知的障害者の日常生活用具に準じた在宅福祉サービスとしての適否を検討するのが趣旨であり、従って、複数メーカーの性能比較検討等はおこなっていない。しかし、今後の機器選定時の選定項目の作成、また、選定への意見具申等については、よりよきサービスの実現のために可能な限りの協力をおこないたいと考える。

 平成10年10月策定の武蔵野市障害者基本計画においても、「日常生活用具の給付・貸与の充実」を、都制度に準じた現行から、「(平成12年度までに)利用者のニーズにあった市単独制度の変更・拡大を図る」ことを障害福祉課、高齢福祉課の所轄のもとにはかるとされており、(37ページ「その他の在宅福祉サービスの充実」)武蔵野市の福祉の基本方針にも合致し、時宜にかなったことでもあると思うので、是非障害者・児の位置検索サービスの提供を在宅福祉サービスとして採用することをお願いするものである。