関係各位 殿
「ここだよねっと」(障害児のための位置検索端末実証実験)
使用後最終アンケートの報告
イナッフ・フォア・トゥディ?
岡部耕典
目的
障害児のための位置検索端末のニーズについて、モニター後の体験を踏まえて調査分析する。
モニター期間 2000年7月20日〜2000年10月19日(夏休み含む3ヵ月間)
アンケート形式
無記名・質問紙・選択形式および自由記入形式の混合形式(別紙添付)
調査期間 2000年10月19日〜11月5日(機器返却時に記入若しくは郵送)
対象 モニター実施対象 23名 有効回収調査票 21通
母集団属性(初回調査に準拠・障害表記は記入された表現のままを採用)
性別
男 20人 (87%)
女 3人 (13%)
年齢
6才 1人 ( 4%)
7才 7人 (30%)
8才 6人 (26%)
9才 1人 ( 4%)
10才 4人 (17%)
11才 1人 ( 4%)
13才 1人 ( 4%)
17才 1人 ( 4%)
48才 1人 ( 4%)
障害の種類
自閉症 11人 (48%)
自閉性、自閉傾向、アスペルガー 6人 (26%)
自閉傾向・知的障害、自閉症・知的障害 3人 (13%)
知的障害、知恵遅れ 3人 (13%)
「愛の手帳」度数
1度 0人 ( 0%)
2度 8人 (35%)
3度 7人 (31%)
4度 4人 (17%)
もっていない 4人 (17%)
子供の居場所が解らず心配することがあるか
年に数回ある 9人 (39%)
月に数回ある 5人 (22%)
週に数回ある 4人 (17%)
まだない・ほとんどない 5人 (22%)
考察の方針
最終考察となるため、過去2回の考察での分析内容との重複・関連も考慮し、下記項目中心に考察した。
サービス提供のニーズに対する考察
機器の大きさ・形状・装着方法に対する考察
全般的な意見の収集
サービス提供のニーズについて
位置情報サービスにどの程度必要性を感じるか
利用前 利用後 差
不必要 0人( 0%) 0人( 0%)
(あまり必要ない) 0人( 0%) 1人( 5%) + 5%
どちらとも言えない 0人( 0%) 3人(14%) +14%
(必要) 8人(35%) 7人(33%) ▲ 2%
是非必要 15人(65%) 10人(48%) ▲17%
位置情報端末を公的機関等が、福祉補助具として貸し出すことを望むか
利用前 利用後 差
希望する 23人(100%) 19人(90%) ▲10%
希望しない 0人 ( 0%) 1人( 5%) + 5%
(無回答) 1人( 5%)
公的機関が貸し出す場合の費用負担額はどれくらいが適当か(月額で)
利用前 利用後 差
無料・安ければ安いほどいい 3人(13%) 2人(10%) ▲ 3%
1000円以下 3人(13%) 5人(23%) +10%
1000円 7人(30%) 10人(47%) +17%
1500円 2人( 9%) 1人( 5%) ▲ 4%
2000円 3人(13%) 1人( 5%) ▲ 8%
わからない・無回答 5人(22%) 2人(10%) ▲12%
機器の大きさ・形状・装着方法について
位置検索情報端末の大きさは適当か?
発信機能付端末 専用端末 合計
小さい 0人( 0%) 0人( 0%) 0人( 0%)
(かなり小さい) 0人( 0%) 0人( 0%) 0人( 0%)
適当 4人(50%) 0人( 0%) 4人(19%)
(やや大きい) 2人(25%) 8人(62%) 10人(48%)
大きい 2人(25%) 5人(38%) 7人(33%)
位置探索情報端末の形状その他に対する希望は?(要約列挙・括弧内は数字
は複数回答)
<形状そのものに対する希望>
小さく、薄く、軽く、持ってることを意識しない形状を望む。(6)
かわいいキャラクター型(電車型、ミッキーマウス型等)であったら持ってくれる(3)
バッチやキーホルダー型のような装着の工夫が欲しい。(2)
角、突起が多い。
めだつ色だったらよい。
<機能に対する希望>
防水仕様望む。
分解したりできない形状を望む。
スイッチオンが確認しずらい。
発信先を3ヵ所以上にしてほしい。
ワンタッチ送信ボタンを使いやすくしてほしい。
電池はずさないで充電できるように。蓋もなくしやすい。
位置検索情報端末の装着方法は、どのようなものであったか?(複数回答)
カバン・リュック・ウエストポーチにいれた 10人 (38%)
(ひもをつけて)ポケットにいれた 9人 (35%)
ひもで(ポーチにいれて)首から下げた 5人 (19%)
背中の田が届かないところにつけた 1人 ( 4%)
ハンカチにつつんでポケットに安全ピン留めた 1人 ( 4%)
装着は適切に機能したか?
適切 6人 (29%)
まあまあ 6人 (29%)
不適切 2人 (10%)
無回答 7人 (32%)
全般的な意見の収集
とても有効なサービスであることが確認できた。
位置情報検索システムは、とても有効なシステムである。
ひとりで行動する機会増やすために是非必要なサービス。
遠足のときにも自宅から検索して安心できた。
端末もっているだけで、お守りのように安心できた。
市町村行政の積極的関与を望む。
これからも行政からの(廉価な貸与への)働きかけを続けて欲しい。
いろいろな市町村で(廉価な貸与を)実施してほしい。
公的機関といっしょに取り組んで(廉価な貸与を)実施してほしい。
検索精度と機器性能の向上を望む。
位置検索の精度の向上を望みたい。
応答範囲がひろすぎる。
市街地で不正確、山間部で検索不能になる。
現状(の精度)では保険的なものになってしまう。
検索オペレーションの向上を望む。
検索時間がかかりすぎ。
応答と同時にFAXでも解答得られたら便利。
位置の誤差の範囲を明確にして欲しい。
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考 察
サービスに対する開始前の100%にちかい圧倒的な期待は、モニター後は若
干の低下が見られたが、それでも、位置検索サービスは「必要・是非必要」を
あわせて、81%の高率での支持が表明された。地方自治体による福祉機器・
補助具としての配備も、90%が配備を望んでいる。しかも、地方自治体配備
の際の自己負担についても、無料とか、高額の負担でもという声が減り、「10
00円以下(500円が多かった)と「1000円」があわせて70%となり、
有償負担しても使いたいという真剣な姿勢が前提であることが伺われ、また、有
償負担の際の具体的な目安も現実的な線に集約されてきたように思われる。
さらに、機器の物理的スペックである大きさ等については、利用経験も踏まえ
ての厳しい見解が寄せられたが、前述の位置検索サービスへの高い支持を鑑みる
と、今の位置検索サービスではサービスはいらないというのではなく、使いたい
ことを前提としたうえでの更なる将来の進化にたいする熱い期待であることが伺
われる。
また、機器を装着させることについては、モニター各自の様々な努力が伺える
結果となり、それなりの努力により克服されたが、(装着は、58%が、「適切
・まあまあ」だった、と答えている。)機器の物理的スペックを補う見地からも、
専用装着具等の工夫および機器メーカーからの付属品としての販売等が検討され
るべきであろう。
さらに、機器の大きさ形状および装着の問題だけでなく、検索精度と機器性能、
検索オペレーションの向上を望む声が多く、ここについては、現行のPHS方式の
位置検察サービスの技術的限界も考えると、次世代システムとしては新方式の検
討が望まれるであろう。
実証実験を終えて
現行のPHS式位置検索システムは、将来克服する技術的課題が多い発展途上のシ
ステムではあるが、自閉症児を中心とする知的・行動障害の障害児が地域で安心して
暮らすための支援システムとしては、非常に切実かつ公共性の高いニードをもってお
り、かつ導入投資コストとリスクがほとんどないこと、運営コストも比較的低廉であ
ることを考えると、これからの地域福祉の基盤整備として導入をさきおくりすべき理
由はないと考える。
機器メーカー・サービス提供業者には、専用装着具の開発、検索オペレーションの改
良でのサービスの向上を並行して進めることを望むものであるが、地方自治体には、
まず現行機器を、障害児にたいする他の補装具や補助具とおなじく無償もしくは低廉
な費用で専用端末が貸し出されることを望みたい。それにたる充分なニードと公共性
は今回のモニター実証実験で十分確認されたが、加えて、今回の実証実験が、これか
らの地域福祉サービス開発と選択の主体として期待されるスペシャルニーズの当事者
の市民が中心となった、しかも、単なる希望や陳情でなく、客観的データ収集の自助
努力をもってのソーシャルアクションであることも留意いただき、関係各位の真摯な
検討がいただければ幸いである