呼びかけ文

 

 2003年1月8日、東京都日野市にある知的障害者入所更正施設「東京都七生福祉園」で、入所中の佐藤進さんが寮内の風呂に入浴中、溺水死していたことがわかりました。

佐藤さんが生活していた寮では、午後6時に夕食が始まりましたが、時間を過ぎても佐藤さんが食堂にこないため、女性職員が寮内を探したところ、佐藤さんが浴室の浴槽でうつぶせになって浮いているところが発見されました。佐藤さんは既に意識がなく、市内の病院に搬送されましたが、午後7時20分に死亡が確認されました。

七生福祉園はこの事件に関して、「単独入浴も訓練の一つだった。予測不能の強度のてんかん発作が起き、死亡に至ったことはまことに遺憾(東京新聞)」「このような事故がおこったことは、誠に遺憾だが、過失はなかったと考えている(毎日新聞)」と一貫して責任を回避し、両親に対しても両親からの質問状が出されるまできちんとした経過説明を全く行いませんでした。また、園側が現在公式に佐藤さんが入浴を始めたとしている時間は、事件直後に園側がご家族へ説明した内容と食い違っています。少なくとも1時間から2時間の間、進さんは、浴槽で浮いていたのです。

更に、死亡確認時に、園としての責任を明確にしなかったため、死亡解剖もされないまま、佐藤さんの死は闇に葬り去られました。

 

 佐藤さんには日常的に、薬の副作用による眼球上転という発作がありました。月に2回〜3回のペースで発作を起こしていた佐藤さんについて、一般的にも十分注意が必要である入浴中に、危険性があるということは十分に「予測可能」だったのではないでしょうか。

また、事件当日の入浴時の職員体制が、他にも複数男性入所者がいるにもかかわらず、女性職員3人だけだったという職員配置にも大きな疑問が残ります。生存権が保障され、監護義務が課されている入所施設で、人一人が亡くなったにもかかわらず、「遺憾ではあるが、過失はない」。七生福祉園だけでも、わずか5年の間に3人の利用者が事故や事件で亡くなっています。人一人の命があまりにも軽視されてはいませんか。それとも入所施設という場所では、指導や訓練といった名目があれば、人が命を失う危険性すら肯定されてしまうのですか。進さんは、なぜ死ななければならなかったのでしょうか。

 

わたしたちは、この事件を通して、障害のある人たちの親御さんにも入所施設のことを再考して頂きたいと思っています。小さい頃から、親御さんと離れて入所施設で生活したいと思っている人はいません。ましてや、隔離された入所施設で一生を過ごしたいと思っている人は誰一人いません。

他に選択肢はないのでしょうか。

施設は、本当に、安全なところなのでしょうか。

 

障害のある人たちが地域で孤立しないような、親御さんが疲弊することなく、地域であたりまえの子育てができるような、地域で一人一人が自由と幸福を追求していけるような、地域生活支援の基盤作りを一層行なっていかなければなりません。

誰もが地域で当たり前の生活をしていくために、そして、このような事件を2度とおこさせないために、「七生福祉園溺死事件を明らかにする会」を発足させました。

全国のみなさんのご協力をお願い致します。

2003年9月25日        

七生福祉園溺死事件を明らかにする会

 

 

呼びかけ人

 

 土本秋夫(ピープルファースト北海道)

 佐々木信行(ピープルファースト東京)

 小田島栄一(ピープルファースト東久留米)

 増田信広(千葉県在住)

 石田博昭(ピープルファースト静岡)

 池崎善久 紀伊埜本勲 後藤武史 沢井克之 西田久美子 三角典子 森川真紀
                       (ピープルファースト奈良設立準備委員会)

 生田進 梅原義教 小松原剛 肌勢俊一 山田浩 松浦良一 宮田隆志

                       (ピープルファースト大阪)

 河瀬和志(ピープルファースト大会in滋賀 実行委員会)

 田嵜和範(ピープルファースト熊本)

 岡部耕典(心のバリアフリー市民会議)

 山崎伸也(P&A千葉)

 永瀬景一 日真己子(自立生活センターグッドライフ)

 

  ぼくたちは、そんなことをやっていても、わかるのです。職員は、すすむ

 くんのなくなる 時間もでたらめで、はっきりいえないのは、なんでなの。

  課長は、何で親につたえなかったの。ふろで死んでいたのに、みんなに

 あやまらなかった。

  「コーヒー3ばい」は、なんだ(※)。おそうしきの前でいうのは、いけないこと。

 なんで職員は人を殺してまでやっているのかな。へんだとおもう。

 ぼくが七生にいたときに、となりにすすむくんがいたので、ぼくと あそんで

 いたのを おもいだします。

  職員が寮の中にいるのに、みんなのことがわからないから事件が多く

 なっている。

  職員が、施設のみんなのことを知って、みんなどんな気持ちでいるのか、

 わかるようにしてください。

  

  ぼくは、小さい時、施設に入りたくなかった。それでも入れられた。もっと

 若い時に出たかった。なんで簡単に施設に入れるのか。悩んでいるのは親だ

 からといって、親どうしで、ぼくたちをぬきで、話しあってきめることはやめ

 てほしいです。

  もう、これいじょう施設に入れないようにしていかないと、子どもがかわい

 そうだとおもいます。

  なんで、すすむくんはなくなってしまったのか。残念でいっぱいです。

  みなさんもいっしょに闘ってください。よろしくおねがいします。

  

七生福祉園溺死事件を明らかにする会   代表 小田島栄一 

 

(※)進さんは、生存中、施設内でコーヒーを一日3杯に制限する、という決まりがありました。告別式の時、七生福祉園の職員が亡くなった進さんに向かって「コーヒー3杯!」と言及したことについて、小田島は、強い怒りをもっています。