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新田勲「足文字は叫ぶ!(二千円)」人が生きる、その命に価値が有る たった一度の「命」燃え尽きるまで、行政の思いのままにはさせない 益留 俊樹 新田勲さんは1940年生まれ。2歳の時百日咳を患い脳性麻痺の重度障害者になりました。言語障害もあるのでしゃべる事が出来ません。重度障害者の自立運動の歴史を語るとき、必ず「重度障害者の自立運動の歴史は府中療育センター移転反対闘争から始まった。当時有楽町にあった都庁に1年8ヶ月の間テントを張って反対した」あの反対運動の中心人物が新田さんです。 足で、一文字一文字床に書き、それを介護者が代わりにしゃべるのです。彼がしゃべり始めると他の人々は黙って聞きます。少しでも口を挟むと「今、話しているから!」と言わんばかりに「ドン!ドン!」と床を踏み鳴らして発言を制止します。特に厚生労働省や東京都の障害福祉課との交渉の時、役人への追及も足文字、介護者もその場の雰囲気で語気を強めて読み上げます。その迫力は鬼気迫るものがあります。 そもそも日本の介護制度は、1974年に東京都が脳性マヒ者を対象にした介護人派遣事業から始まりました。この制度は、新田さんが足文字を使って都と交渉して作らせたのです。1987年に制度改正され、脳性マヒの障害者だけでなく四肢麻痺の障害者を対象にした「全身性障害者介護人派遣事業」になりました。この派遣事業が、自立支援法の「重度訪問介護」につながります。日本の介護制度は、新田さんが34年に及ぶ行政交渉を足文字で行ない生み出されたと言っても良いでしょう。 今回出版された「足文字は叫ぶ!」は、その34年間に及ぶ戦いの歴史が一文字一文字綴られています。掲載された資料も含めその内容には圧倒されます。介護人派遣事業から日常生活支援へ、そして重度訪問にいたる制度の中心となった「見守り」という概念を主張し続ける新田さん。国は、何かと言うと「金が無い!福祉は公平平等が原則です」と、これまで作り上げてきた制度を壊そうとします。また、そのお先棒を担ぐ福祉学者を糾弾し「命を守る為に福祉があるんだ!」と叫びます。 批判の矛先は障害当事者や事業者(CIL)にも向けられ、本編の『第七章パーソナル・アシスタンス/ダイレクト・ペイメントを求めて 四「契約」制度は自立を阻害している』の章で「また、施設から自立しても、施設の職員から外の介護に代わったに過ぎないのです。極端に言うと、家族のなかから施設に移ったに過ぎないのです。そういうところでは、介護者探しに苦労していないから、派遣されてきた介護者にありがたみも薄く、そこで自分の気に食わない介護者だったら、とっかえひっかえするのは当然なのです。」と辛らつです。ILPを通して「自立生活」「当事者主体」「当事者にしか当事者のことはわからない」と声高に主張してきた私ですが、この批判を受けて思わずドキリとしました。ここでもう一度「自立とは?」と原点にもどり、「生活の主体者」として「介護者」も「当事者」として「自立生活」を共に築く。その様な思いに辿り着きました。 とにもかくにも、この本は一般書店では手に入らない限定500冊の貴重本です。是非お買い求めください! |
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