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介護者C(28歳・男) 自立生活センターM所属(介護福祉士) <介護の仕事をはじめたきっかけについて> 今の仕事をはじめるまえは、老人病棟で働いていた。看護婦の手伝いで、シーツやオムツの交換とか。特に資格はもっていなかった。介護保険施行前で、「これからは社会福祉だ」みたいな雰囲気があった時代だけど、別にそういう理由じゃなくって、サラリーマンにはなりたくなかったのと、資格がなくてもできる仕事っていうか。 でも病院はひどいところだった。身体拘束あたりまえ、一晩にオムツ100枚交換とか、両手にスプーン持ってふたりに同時に食べさせるとか。そんなこともやったなあ。それで婦長とかとケンカした。別に患者の世話とかが嫌だったわけじゃないけど、「こんなところでは働けない」と飛び出した。そしたら、仕事がなくって(笑) コンビ二とか牛丼屋でも雇ってくれなくて、困った。そのとき、アルバイト雑誌で、今働いている事業所の広告をみたことがきっかけで、障害のほうの介護をはじめた。これも別に「ふくし」がやりたかったわけじゃない。時給がいいな、と思ったことが覚えてますけど。 <現在の仕事の状況> 現在の仕事は、コーディネーターが中心。介護もはいるけど、「枠」で定期的にはいるのは、新しい利用者が中心で、あとは、Iさんとかぐらいかな。それも結構不規則で、トラブルなどのときは毎日会議ばかりということもあったし。あと、ボランティアで、普通学校の障害児介助とかもやっている。 コーディネーターとして担当しているのは、10人ちょっと。大人3名、子どもが8名ぐらいかな。大人のうち2人は肢体不自由だけど、あとは全員、知的障害プラス自閉症の人。ただし、レベルは、ひとりで買い物にいったり、電車乗って出かけちゃう子どもから、言葉がない、パンツのなかに大便しちゃう、他害・自傷がある、まで、いろいろですね。 <自閉症の子供との出会い> 小学校のころ、親に、障害児の交流キャンプの手伝いに連れていかれた。そこで、カレー作ってたら、障害児から、ボコボコに殴られたことがある。今から思えば、自閉症子どもで、なんだか理由はわからないけれども、自分がニンジン切ったのが気に入らなくって、怒ったことだけは、わかった。ともかく、何がなんだかわからず、怖くて、トラウマ的な感じ、が残った。 だから、介護始めてからも、障害児にはいいイメージもっていなかった。大人でも、自閉症の人たちには、腰が引けてしまう、ところがあった。それが変わったのは、Yに関わるようになってからかな。そのころYは不登校してたんだけど、自分も中学時代に不登校の時期があったりしてたんで、「なんだ、普通じゃん」と思った。また、Yって、強制されることが嫌なくせに、押し付けられると結構いうことをきいてしまい、それで悔しくて泣いちゃうんだ(笑) 自分も人一倍押し付けられるのが嫌いで、でも、こうみえても結構気が弱くて、その気持ちがよくわかる。自分とよく似ている。そういうことを、時間とともに感じるようになった。そうすると、「かわいいな」と思うようになったし、仕事的に、というより、人間として、Yが好きになった。 <自閉症の子どもたちの介護って?> 一般論みたいな言い方になってしまうけど、自閉症の人たちには、「こだわり」っていうか、世界観みたいなものがある。それがわからないと、介護にならない。 最初は、「難しいな!」って思った。でも、他害・自傷・パニック…それって、その子のコミュニケーションの方法じゃないの、って思うようになった。言葉で言い表せないから、体張って、訴えてるんだ。だから、なにかあると薬飲ませる親には、「それって違う」といいたい。暴れちゃってなんなんだろう、ということを、その子の視点から見てあげる、その子の世界観から見てあげる、それが大事なんだ。 だから、腕をガリガリ引っ掻かれたら、「なにか言いたいことあるんだろうな」って思う。気が済むまで引っ掻かせてやるよ。もちろん、「もう限界、痛てぇ」というときはあるよ(笑) でも、そういうときでも、「二回目はちょっと勘弁」っていう感じかな。別にキレることはない。そりゃあ、「いい加減にしろ」とかは、大人の利用者、身体の利用者含めて結構思うことはあるし、そう言うこともあるけど、子どもに怒鳴ったりはしない。だって、怒るには、そうしてもいい信頼関係っていうか、安心感っていうか、そういうものがなくっちゃならない。だから、子どもには、基本怒らないね。 エレベーターにこだわりがある子どもに6時間つきあったこともあるよ。だって、それって、親はさせてくれないことで、俺といるときしかできないことなわけじゃん。それなら、やらせてやりたい、と思う。そのうち、本人が飽きてやめる。別に注意してやめさせることはしない。もちろん、道路へ飛び出していくとか、本当に危険なことは、体張って止めるよ。そのことと、これとは別だと思う。 あと、「薬」の副作用だと思うんだけど、医者が言う「あおり」っていうやつで、アピールでもなくパニックでもなく、暴れたくなくても暴れてしまうこともあるように思う。そういうときには、介護者が「カップル座り」みたいなかたちで、後ろから本人が動けないように抑えてあげるってことも、時としては、必要なんじゃないかな。もちろん、「縛る」なんて論外だけどね。 また、大人の自閉症の人には、なにか「引き戻してあげなくてはならない」というときはある。とまらなくなっちゃうっていうか。そういうとき、あえ怒鳴る、っていうことはすることがある。自分はしないけど、そういうときに、ぱちん、と平手打ちしちゃう介護者もいる。あるいは、その人自身が、必死で自分の手を噛んで耐える、とか…でも、そうしていない人に「自傷したら」とかいえないし(笑) 利用者のいうことを聞き、してほしいといわれたことをする、っていうのはもちろん基本だと思うけど、これは肢体不自由の大人含めて、100人中100人がそれで済むわけじゃない。こちらから仕掛けなくちゃいけない人、っているし、そうすべきときもある。 だから、介護しているときは、「なにがいいたいんだよ」っていつも考えている。なにかをやらかした。で「さて、なんでだろうな」って。引掻かれても、罵詈雑言浴びせられても、「そうしたいんじゃないんじゃないか、それが言いたいんじゃないんじゃないのか」ってね。言葉や、やることの表面だけじゃ理解できないんだよ。自閉症の事書いた本読んだりすることもあるけど、やっぱり、人を理解するのには、まず、つきあうこと。それも、、そのための一定の時間、っていうのが必要なんじゃないのかなあ。他の介護者の対応見て、なるほど、って学ぶこともあるね。 そう考えると、介護って、「対等な関係」じゃあない、よね。特に子どもに対しては「関係は下だけど、自分は大人」って思う(笑) <「関係が下」っていうのは、仕事、雇われてる、ってこと?>そうだね。 <じゃあ「大人だ」っていうのは?>「目線が大人」っていうか、「枠を護っている関係」っていうか、そんな感じかな。 (自閉症の子どもたちの介護では)「自由になるため」には、最低限のリスクマネジメントの枠組みみたいなものは必要だと思う。(それを作ったうえで)ひとりではできないこと、親と一緒ではもっとできないことを、一緒に失敗とか成功とかしながら、こいつとどう付き合っていくのかを考えながら、するんだ。親に内緒で、ポケットマネーでゲーセンいったりしてさあ。親には怒られるけど(笑) どんなに障害の重い人でも、最終的には、自分で「自分の枠組み」は作れるんだよ。でも、親元とか施設を離れて、つまり、「枠」が取っ払えて「自由」になったとき、まず、わからなくなる。でも、同時に、一生懸命、考えている、んだよ、本人としては。そういうときに、介護する側が「今はこういう時期なんだ」って見てあげて、最低限のリスク回避をしたうえで、待つ。そして、一緒に、乗越える。そうすると、自分自身で自分の枠組みを作り直していくんだよ、当事者は。みんな「変わる力」をもっているよ、どんな重い人でもね。そういう経験が何回もある。 でも、当事者と母親の関係って、とっても難しいね…なんか、うまくいえないが、とっても変、だよね。特に、息子の場合、母親の愛着が異様だ、って思うことが多い。成人しても、おちんちん洗ってもらっていて、お互いになんとも思わない、とか。だから、自分たちの大きな役割って(本人のヘルパーや親のレスパイトだけでなく)「母と子の間にしかない関係以外のパイプを作る」ってこともあると思う。 <将来のことは?> 将来どうするかわからないし、障害者運動への関わりとかは変わっていくのかもしれないけど、介護はずっと続けていくと思う。めんどくさいけど好き、なんだ。そして、他になんにもできない俺を評価してくれる、この関係(利用者と事業所の仲間たち)の関係のなかで生き、この界隈(地域)で暮らしていくと思うよ。 将来は、重心の人たちの支援もやりたいんだ。グループホームとか、日中活動の場とかね。重心の人たちって、「このひとたちは、動けないし、なにもできないし」って思われている。それがすごく嫌なんだ。 <今介護している亮佑や他の子どもたちとは?>もちろん一緒だ。それは、前提です、いうまでもないことですよ。自分としては、小さいころから介護うけて育った子どもたちが将来どうなるのか、本当に楽しみでしょうがない。みんな早く自立(生活)したほうがいい、それが楽しみ。 <心配は?>楽しいことしか、思い浮かばないなあ…(笑) 親には、子どもは早く自立させたほうがいい、自分の目が黒いうちに自立させたほうがいい、っていいたい。なにがなんでも自立させるぞ、って(こっちのほうは)思っているから、って(笑) <親としては、つい「ずっと面倒みてくれるか心配」って思ってしまうが…)そりゃわかるけど、自分たちは、支援を打ち切る、介護派遣を打ち切るっていうことは今までもなかったし、これからも、ない。利用者のほうは、支援費の時代になって「事業所を選ぶ感覚」みたいなものもできてきていると思うし、それは別にそれでいいと思うけど、こちらから切る、ってことはない。そりゃ、介護者全員が今の仕事を続けるかどうかはわからないけど、少なくとも、俺と、××と、△△と、○○は…あれ、「絶対に」って奴は、そんなにたくさんはいない、かな(笑) でも、大丈夫だ。そう思うよ。 <どうして大丈夫なの?>まあ、俺たち、「宗教」みたいなもんだから(笑) ◎◎さん(自立生活センターMの代表の当事者)を中心としてね。◎◎さんが、「自立!」っていうと、凄い、わけわかんないけど(笑)凄い、んだ。<◇◇さん(チーフ・コーディネーター)は?>◇◇さんが急にお陀仏になったとしても、お経あげたら、あとは、◇◇さんの利用者のこと考えるね、きっと俺たちは…(笑) とにかく、俺はやっていくと思うよ。 |
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