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  亡くなったSさんと/の、依存しながら自立するという生きかたのこと
                      =ある「通信」から=



Sさんは何かする度に、帰りの挨拶をするたびに、ありがとうと何度も言ってくれましたね。
何度も何度もありがとうと。まだ、耳に残っています。

本当にありがとうございました。ありがたいのは私の方です。

Eさんに出会えたことに感謝しています。
ありがとう。


                                             (介護者U)



たしか最後の入院になったその前の入院での事。病院にも夜10時まで介護者が入っていて、私の介護の日の10時5分前ぐらいになりました。

Sさん「もう支度して帰っていいですよ」 
H「はい、では支度して帰ります」 

支度をしていると、

Sさん「あの…やっぱりもうちょっといてもらってもいいですか?」 
H「はい、いいですよ。」

しかし、ものの5分とたたないうちに気を取り直したように毅然として…

Sさん「もう大丈夫です。帰っていいですよ。」 
H「そうですか、では帰ります。おやすみなさい。失礼します…」  


                                             (介護者H)



怒られた事、笑っていただけた事、美味しかった事、不味かった事、
      悲しい事、嬉しい事、Sさんとのあらゆる時間を
       全て纏めた一つの塊のようなそれ自体に
         敬意と感謝をさせていただきます。

                                             (介護者S)



私は仕事としての介護は初めてで、いろんなことを教えてもらった。

なにより大きかったのは、意見の違う人と一緒に過ごすことの可能性が「介護」にあるということだった。
意見の違う父親との確執を抱えていたわたしにとって、それは大きな付き合い方のヒントだった。
私の父は言葉も体の自由も失って数ヶ月を過ごしたが、私はその数ヶ月を臆することなく父の傍に居られた。父の傍らに「介護」というかたちで居続けられたことがなにより、Sさんからの贈り物だったと思う。

期せずして二人は同じ年に亡くなってしまった。最後まで指示を出し続けたというSさんの凛とした姿勢は亡くなって更に強く、介護の可能性を人々に印象づけたと信じている。こときれたSさんに「お疲れ様でした」と声をかけた。

                                             (介護者K)



シャワーチェアでトイレから戻り、そこからがいつもの”クッション”調整

「う〜ん、もうちょっと上…いや…下、ん…ほんのちょっと上、もう少し、う〜ん左側をこう、そう、よし、いいか、う〜ん、下、…上…ヨシ。」

細かく調整したその位置は、元の位置とさほど変ってはいないのだけど、それは微妙なSさんの仕事。

「この微妙な位置なんですが、私にとっては1日の変る場所を決めてしまう重要な作業なんですよ。」

照れくさそうに、おちゃめなおじいちゃまが言う。なんだか、その”クッション・調整・タイム”がすごく素敵な・時間でした。

ご冥福をお祈りしています。本当にありがとうございました。


                                             (介護者S)



Sさんの長い戦いが終わりを告げた。野の花はただ咲くことにひらすらひたすら咲く、でもそれは花が咲く迄のことです。つまり、息が留まることが辛いのだと思います。(中略)

風は何故吹くのかな?太陽が何故毎日沈むか忘れがちになるが。
次の日を迎える為だということを忘れないように、独り独り使命が終わりを告げるのだと思う。
          

                                              (当事者K)


Sさんの厳しい視線に鍛えられながら、最後に残った10人の介護者は、Sさんが亡くなった後早速他の利用者の介護に入って活躍しています。
Sさんは最初から、「人は周りの人に少しづつ依存しながら自立するべきだ」という考え方だったと思います。(中略)

私たちの事務所のなかでも、他者にうまく依存できずに自立生活を続けている障害者が孤立したなかでうつ病になったり、多くの介護者も孤独ななかでうつ病や、ギャンブル、薬物、異性等への依存のなかで苦しんでいます。(中略)

今は私自身も含めて、まだ若い障害者や介護者がこれから歳を重ねるなかで、どうしたら周りの人に少しづつ依存しながら自立して生きていくことができるのか?という途方もない課題について日々考えながら人と関わっています。

                                            (コーディネーターS)



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