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              自立生活企画。そして、これから
                   
=自立生活企画通信より=
                                             益留 俊樹

 1992年に設立した自立生活企画も今年の3月で丸15年になります。この間重度身体障害者の24時間介護制度の実現を求めて活動してきました。ちょうど高齢者の介護が社会問題として取り上げられ始めていたので、とんとんとーんと制度(ヘルパー制度・介護人派遣事業)が伸びて1994年の4月から24時間の介護制度が実現しました。これらの制度を使って施設の重度障害者の自立を支援して、田無市をはじめに、保谷(2001年に田無と合併して西東京市) ・東久留米・東村山・小平・清瀬市、次々と24時間介護保障を各市に実現してきました。さらに2000年の介護保険が始まった年に、同じ自立生活センターのグッドライフや生活援助為センターと協力してNPO法人自立福祉会(ウィル~アシスタントバンク)を立ち上げ、上記の市からホームヘルプ事業の委託を受けました。支援費制度が始まった2003年からはNPO法人自立生活企画として「指定居宅支援事業者」となり身体・知的障害、及び児童へのヘルパー派遣を行なうようになりました。また2005年から生活寮を開設し自立支援法になっても引続き「指定障害福祉サービス事業者」としてサービス提供を行なっています。

 この15年間の自立生活企画の歩みを雑と挙げましたが、当初身体障害者を対象に自立生活プログラム(ILP)を組み自立支援を行ってきたので、どんなに重度の障害があっても一人暮らしは可能でした。しかし、知的障害者や児童に対する支援は消極的でした。それは親がかりの児童の延長線上に知的障害者の支援のイメージがあった為だと思います。これはまさしく知的障害を持つ人への偏見であり差別をしていたと言っても過言ではありません。

 ここで他団体ではありますが、少し自立生活センターグッドライフ(石田義明代表)について触れたいと思います。グッドライフも企画と共に重度障害者の自立生活を支援してきました。しかしグッドライフは設立当初から知的障害者の自立支援を行ってきました。ご存知かもしれませんが、重度身体障害者のヘルパー制度は一日24時間使えるのに知的障害者の場合は良くて10時間程度です。これでは一人で生活するのは無理だと言えます。そこで、グッドライフは日中活動の場として「はたらきば」を企画・援助為・CIL小平と協力して作り、さらに施設や親元から地域生活に移行する上で必要な生活寮(グループホーム)を運営しています。また知的障害を持つ人と支援者が共に運営の主体となって設立した「ピープルファースト・東久留米」の運営にも関わり、知的障害を持つ人に寄添い地域で生活する基盤づくりを着々と進めてきました。

 自立生活企画とグッドライフ、障害を持つ人の自立生活にむけた取り組み方、意識の違いは何か?違いと言うよりも「ズレ」と言った方が適切かもしれません。それは、「自立の理念」を「自己選択」「自己決定」「自己責任」であると規定したから「ズレ」たのだと思うのです。「自立の理念」これらは私たちが成長する過程で学び身に付けるべき「社会常識」とも言えるものです。ある意味万人が認めるものでもあります。が、その万人の中に障害者は居ません。だから「自立の理念」を「自己選択」「自己決定」「自己責任」であると規定しました。しかし、ある時「益留の言う自立では、自分たち脳性マヒの障害者は自立できないよ」とグッドライフの石田さんに言われました。ショックでした。自己責任の取れない障害者は自立生活は出来ないと言って突き放していただけだったのです。「ズレ」とはまさしく差別が生み出したものでした。

 では自立支援とは何か?例えば、自己選択をする場面で
一緒に決める。だけではなく一緒に迷う。自己決定する場面で一緒に決める。だけではなく一緒に悩む。自己責任を取る場面では責任の取り方を支援する。だけではなく、一緒に逃げる。そして時には喧嘩し、時には放って置くそれが自立支援であり寄添うことだと思うのです。でも、これって私が育ってきた環境(親や大人たち、友達との係わり)そのものではないかな?と思うのです。私たちはいろいろな人たちとの係わりの中で生きています。人は時には厳しく、時には甘く、時にはあいまいに…その関係の中で互いに責任を取り合います。私たちはその様な「社会常識」や「自立の理念」を身に付けてきたはずなのに「自己選択」「自己決定」「自己責任」という障害者の一方的な狭い自立の理念を、さも高尚な自立の理念のごとく語っていたのでした。

 そもそも障害者とは、体が不自由だから知的障害や精神障害があるから障害者と言うのではなくて障害が有る事を理由にあらゆる可能性や経験を得る機会を制限されてきたからこそ障害者なのです。「さあ、自立したのだから責任を取りなさい」と迫っても責任を取る手段がないから障害者なのです。だから介護が必要なのです。責任を取る手段として介護者の係わりがあり、介護者も仕事として、時には厳しく、時には甘く、時にはあいまいに寄添いながら…その関係の中で互いに責任を取り合うのです。誤解の無いように付け加えますが、障害者と介護者の双方が責任の取り方を話し合うという意味です。

 自立生活企画が、知的障害者の支援や障害児童への支援を行うようになった背景には上記のような他団体との係わりや苦言があって出来たことです。そして、これからも突き放すだけの自立支援ではなく寄添いながら時には放っておく、その様な人の係わりのある自立支援を行っていきます。


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