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重度訪問介護を使わせて〜  その2  支援の形や制度の枠組みで分断される
        =たこの木通信 237号=


                                                               寺本晃久


知的障害の人の暮らし方は、かなり多くの割合で次の3つくらいなんじゃないか。

 @入所施設で暮らしている
 A親と同居して、作業所や通所施設に通い、休日は移動支援を使う
 Bグループホームに住み、企業や商店などで働いている

少し前まで、入所施設の枠組みがまず基本にあって、ひたすら入所施設を増やすことを国も親も福祉関係者もやってきた。現在およそ13万人が施設で暮らし、入所施設に半分以上の予算がかけられている。

家族が支援できる場合は、作業所や通所施設を作って毎日そこに通う。2003年の支援費制度になってから、全国で移動支援(ガイドヘルプ)が制度化され、これを利用する人も増えていると思う(一部では、市や県の制度でガイドヘルプが90年代以降できてきていた)。

グループホーム(生活寮)は施設が自主的に運営したり、東京都などが制度化したりしながら、この20年ほどの間に徐々に増え、支援費制度以降、入所施設から地域へ移行するための暮らしの場として急速に増えてきている。以前は、(たしか都の制度では)入居にあたって一般就労していることが条件だったのと、たいていは世話人がひとりいるだけだったり昼間は支援者がいなかったりで、昼はなんらかの形で就労してたり、作業所に通うなどしている場合が多いのではないかと思う。

こうした暮らし方の区分けはそのまま「業界」の区分けでもあって、自立支援法になるときに(なってからも)、個々の業界が自分たちの枠を守るために運動し、個々に激変緩和策なんかを勝ち取ったりした。この春に「通所施設などに通う人の家庭の金銭負担がふえたから、上限を37000円から9300円に減らしました」というのも、そのひとつ。「入所施設への適用は5年間で段階的に行っていく」のも、それ。

自立支援法になって、入所施設も多角経営が推奨されていたりする。今後は入所施設だけでは先細りということで、グループホームやヘルパー派遣やら通所やらもひとつの運営主体でやって、スケールメリット生かしていけばお得ですよということのようである。

しかし、そこで暮らし支援を受ける障害者は、ひとつの支援の中で暮らしが完結してしまうことを意味する。

支援の枠と業界が先にあって、そこに体よくあてはめられてしまうのだ。

そして、たいていは、社会参加と口当たりのよい言葉で、なぜか常時の集団行動が求められる。入所施設でなくても、昼間は作業所や通所施設(自立支援法以降、土日も通所があくようになったりしている)に行きなさい行きなさい。家に帰ればグループホームで、休日もグループホームの人と一緒に外出しなければならなかったり。

それでも、とても人好きで寂しがりやだったり、本人かまわりのどっちかがある程度我慢したりしてやっていければいいかもしれないが、それになじまないなじめない人だと、何かトラブルがあるとその人の障害や不適応のせいにされ排除されてしまって、行き場を求めてさまようことになる。しかしそれは支援と関係性の問題であり、また、人と仲良くしなきゃだめだ、集団生活の訓練も必要だ、と言う人々は、実はしっかり自分の時間を確保していたりするのだ。

ホームヘルプの制度は、@家事援助A身体介護B移動支援C行動援護D重度訪問介護E重度包括介護、にわかれた。

ホームヘルプもいろいろありまっせ、どうぞご利用ください、と官僚はのたまうかもしれないが、長時間の見守り・見護りを前提としている類型はDとEで、これは重度の身体障害をあわせもっているような人以外の多くの知的障害の人は使えない。したがって、制度の建前としては、知的障害の人にとっての長時間の支援は、ほぼ入所施設しかないことになる。長時間の支援が必要な人は家族がずっとついているか、施設へ行けということになってしまう

独居などで家事援助・身体介護・移動支援・通所系などをあわせて100時間の単位以上の支援が必要な人、昼間はなんらかの通所系・就労などの場に通い、帰宅後から翌朝まで毎日の泊まり介助が必要な人、などは、細切れの制度や類型を一生懸命かきあつめて、全体として一定の支援の量を確保しているのではないかと思う。

入浴だけとか掃除だけとか時間も短く時間帯と目的が限定されている場合は家事や身体介護で、それ以外で、目的は明確ではないかもしれないが自由に動けるため生きるために必要なところはみんな同じ類型でもいいのではないか。そこで、重度訪問介護の対象者をすべての求める人に拡大するという手がある。

役所的にも事業者としても利用者にとってもわかりやすいだろう。ということをあるとき市役所の人に話したら、「それは国が決めてることだからねえ」と言われたが、簡単なことだ、法律の条文の対象者のところにひとこと加えるだけでよい。

ある人は、「行動援護がありまっせ」と言うかもしれない。

しかし、そもそも前提と使い勝手が悪いくせに、恩着せがましく、昨年10月から行動援護の要件をゆるめて対象者を拡大しましたと言っちゃってる。

 ……というところで今月も紙面がつきた。

重度訪問の対象を拡大し、行動援護を葬り去ろう。

そのために、改めて、この20〜30年の自立生活運動と全身性障害者介護人派遣事業の歴史に学び、それをすすめ/乗り越え、障害種別と業界を超えたとりくみが必要だ。

〜岩ちゃんに断りもせず勝手に、つづくかもしれない〜




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