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当事者に聞いてはいけない その1

        =はてなのたね通信 第15号=


                                 
自立生活センターグッドライフ 介護コーディネーター  末永 弘


身体障害の人達が広めてきた当事者主体という考え方が最近ではだいぶ知的障害者の関係にも広まりつつあり、それに伴って「当事者主体だから当事者に聞く」あるいは、「その人の生活のことだからその人に聞く」ということで、当たり前のように介護者や支援者が当事者に質問している場面をよく見かけるようになりました。しかし、介護者がなにか質問をして、当事者は一応言葉で答えてはいるのですが、その二人の様子ややりとりを見ていると、その答えはなにか違うんじゃないか?と思う場面が非常に多いのです。皆さんも自分が介護者や支援者の立場で当事者に質問して、返ってきた答えに疑問を感じることが実は多いのではないでしょうか。

これは何が問題なのかというと、当事者の考えや気持ちを聞こうとして、そのための方法が「質問する」というやり方になってしまうため、それが結果的に当事者の考えや気持ちとは違う答えを引き出してしまうという事態になっているのです。つまり当事者に質問するというやり方に問題が多く含まれているわけです。

私たちはごく当たり前に、当事者だけでなく誰に対しても「質問してその人の考えを聞く」という形でのコミュニケーションを行っていますが、実はこれば次のような理由から非常に難しい事なのです。

 @質問というのは、基本的に相手に対して「答えなさい」というメッセージを含む
  命令形のコミュニケーションであること。

 A質問に対する答えの中身というのは、質問者が誰であるか、どういうニュアンス
  で聞かれたか、どういう場面やタイミングで聞かれたか等、質問者側の要因に大
  きく左右されてしまうこと。

 B「言葉」というものが、そもそも自分の考えていることや思っていることを伝える場
  合に簡単な方法ではないこと。

つまりもしほんとうに相手の考えや気持ちを理解したいならば、言葉で質問するよりもその人の顔や行動を何気なく見ていたほうがよほど正確に理解することができるということです。

ここまで「質問すること」に否定的な角度から書いてきましたが、当事者と非常にいい関係の介護者やベテランの介護者を見ていると、当事者にたくさん質問していて、しかも結構当事者の気持ちに沿っていると思われる答えが返ってきていることも多いのです。ではいったいなにが違うのか?そこにはどんな技が隠されているのか?その辺のことを次回に又書かせてもらいたいと思います。




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