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当事者に聞いてはいけない その2

        =はてなのたね通信 第16号=


                                 
自立生活センターグッドライフ 介護コーディネーター  末永 弘


全号では、当事者に聞く(質問する)というやり方がなかなかうまくいかない理由として、

 @質問は、「答えなさい」というメッセージを含む命令形のコミュニケーションであること
 A質問への答えは、質問者としての聞き方等に大きく左右されること
 B言葉というものがそもそも自分の意思を伝える手段としては簡単ではないこと

という3つを挙げました。

しかし一方で利用者と関係のいい介護者やベテランの介護者は、よく質問しているように見え、しかも利用者の気持ちに沿っていると思われる答えが返ってきているように見える、そこにはどんな違いやどんな技があるのか、それが今回のテーマです。

その答えは、上記の3つの問題をいかに解消するかということです。

@については、質問しながら合せてその利用者が欲しがっている情報をしゃべることが大事です。

「○日にピープルファーストの集まりがあるけど参加しますか?」という質問をしながら、そこには、誰が一緒に行くのか、行くとどんな良いことがあるのか等、利用者が欲しがっている情報を出しながら聞いていくということです。利用者がもっと話したくなるような「誘惑形」の聞き方であることが重要です。

Aについては、介護者が先に自分の考え方を明らかにしてしまうという方法が以外に有効です。

逆に悪い聞き方は、利用者に影響を与えないように自分の考え方を隠して質問し、その結果返ってきた答えが自分の考えと違うと思わず不機嫌な表情が出てしまうというパターンで、このようなコミュニケーションをしていると、利用者は介護者がどう思うかが気になって、素直な答えが出しにくくなってしまいます。例えば、「私は行ったほうがいいと思うけどどうする?」というように、自分の意見を先に出しながら聞いたほうが利用者は答えやすいのです。その時に、利用者が自分の意見に影響されてしまうのではないか?と心配する必要はありません。近くにいる人に影響されてそれを自分の意見とすることは誰にでもあるごく普通のことです。又、普段から利用者は自分と違う意見だった場合にそれをきちんと認められる関係を作っていれば、利用者は自分と意見が違ってもごく普通にしゃべることができます。

Bそもそも、ほとんどの事はわざわざ利用者に言葉で確認しなくてもその答えは普段の行動の流れから想像すればわかるはずです。

例外的に聞かないとわからない事については、聞かれても利用者本人もよく分からない場合が多いので、「行きますか?」「行きます」というようなアリバイ的な(介護者として自分が利用者に確認しましたと説明するための)やり取りをしても、それがその利用者の意思であるという根拠には全くなりません。逆に普段から言葉だけに頼らず、相手の流れや動きをよく見てコミュニケーションをとるようにしていれば、答えに違和感があったら別の角度から聞き直すことができます。

つまり結論としては、利用者に安易に聞いて(質問して)はいけないということです。

まず普段から言葉だけに頼らないコミュニケーションを取るようにすること。利用者を理解しようと思うならば、まず介護者である自分がどういう人であるのかをちゃんとアピールして自分に興味を持ってもらうように努力すること。そして、自分が利用者に影響を与えることを恐れないこと。腰が引けた位置で利用者に関わっている介護者は、利用者から「意味がよくわからない人」というふうに見られてしまい、それがコミュニケーションの最大の妨げになってしまうのです。




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