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 行動援護研修でしゃべったこと
       =ともにネット通信39号=


                                                               藤内昌信



9月には行動援護従事者養成研修(東社協主催・居宅ネット協力)が2回あり、講師ででかけてきました。そこで私は以下のことをしゃべってきました。


縦軸(時間〜一人の歴史と将来)と横軸(地域的拡がり〜人とのつながり)でみること

行動援護や移動支援でヘルパーが関わっている時間と空間は本人の暮らしの一部でしかありません。そこの関わるだけで、本人がわかったと思うなら大間違いですs。例えば、サポート中は「問題行動」をおこさないのに、家では母親に当り散らす人がいます。3時間歩いた末に、サポート終わったと思ったら、親を引き連れてさらに3時間「こだわり」行動の人もいます。このへんに目を向けられない人は、支援者から「退場」してもらったほうがいいと思います。

暮らしトータルに付き合う中でしか見えてこないことはたくさんあります。くやしいかな、このへんはまだ親にかなわないところもあります。関わる時間の違いです。でも、親とはちがう関わりのなかでの新たな発見もあるはずです。

そして、これまでどうやって生きてきた、この先どう暮らしていくのか、そこに自分がどう関わっていくのかという時間的な縦軸と、本人に今どういう支援があるのか、そして自分の支援はどういう意味(位置)をもっているのかという横軸でみることが大切だと思います。

ともにネットの宿泊体験で、「行動援護」の利用者二人がサザンのバラードにとてもいい表情をみせることを発見できたのは、サポーターが何泊も一緒に過ごしたからこそでした。(本物のサザンのコンサートに連れていけたら給料上げたいです)

私は、豪雨の中でも「こだわり」行動につきあえるサポーターを誇りに思っています。実は、そういうサポーターには本人も心を開いてくれます。「こだわり」行動も「ゆとりをもった」「こだわり」行動になります。これは、実はサポーターが付き合う中から自らの心を開いていく過程なのだと思います。「自閉」が実はサポーターの側にもあるとき、それは強化されていきます。サポーターが「こいつは何をしでかすかわからない」「いつ自分に向かってくるか」と緊張感いっぱいで関わっていると、本人は「期待に応えて」サポーターに噛み付いてきたりします。「うわぁ〜!すごい、これは自分も予想しなかった」ぐらいの「楽しむ心」ぐらいで関わるほうが「自閉症」への道なのかもしれません。


「わからない」からおもしろい。ここが支援の醍醐味!

精神科医の小澤勲氏は今から30年以上も前に以下のように書いています。(1976「反精神医学への道標」より)


  わからないということ

話をもとにもどして、われわれが症児を前にして「わからない」と感じる時のことをもう少し緻密に考えてみたいと思う。まず結論から先に述べよう。「わからない」というのは「わかると困る」ということなのだ。私の言葉で説明すればこういうことである。ある対象を前にしてその対象の言葉なり思想なりが私の「思考の枠組み」から著しく逸脱して、枠組みにくみこむことが極めて困難な場合に私の対処の仕方には二通りある。何らかの口実、たとえば相手をキチガイだというか、異常だとか、病気だからという理由によって「わからない」ことを対象の責任とし、対象と自分との関係を絶つことによって自分を守るか、それとも自らの「思考の枠組み」を根底的に解体しながら、そこから生まれ出ずる対象とのあらたな「関係」に賭けるという不断の苦痛に満ちた作業をするかである。「思考の枠組み」の解体などというより自らの「感受性」の解体、再生と言った方がよいであろう。あるいは、「ものの見方」というより「ものの見え方」の変化というべきかもしれない。いずれにしても、「わかろうとする」ことは実にしんどいことなのである。…



ちょっと固い文章ですが、「障害は関係の中に」あるということを見事に表現してくれています。言語障害のあるKさんとの関わりが深くなれば、言語障害は二人の関係のなかでは「障害」でなくなります。聞き取れなかった私が「聞き取れない」「障害者」であったわけです。知的障害・自閉症とよばれる人たちとの関係でも同じです。「読み取れない」関係こそが「障害」であり、「わからない」ことは知的障害・自閉症のあなたのせいだとするところからは次が生まれてきません。

たしかに「わからない」ことが多いのです。「わかろうとする」ことは確かにしんどいことです。でも「わからないからおもしろい」のであって、実はここが支援者を引き込む魅力なのだと思います。「行動援護」に関わる支援者の基本の立ち位置はここであってほしいと思います。




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