TOP>supported-living >110915tomomi_okabe.html |
自立前・後の亮祐の生活 調布ゆうあい福祉公社ヘルパー研修レジュメ リソースセンター・いなっふ 岡部知美 <1〜3歳頃(幼稚園入園まで、一般の幼児教室に通う)> ・まるっきり言葉を理解していない。表出単語は少しある。「でんしゃきた」「あか」 ・人間、親を意識していなかった。初めての人や、場所には比較的、強いタイプだった。 (エピソード;シーソーに乗ろうとして、先にいた自分より小さな女の子のひざの上に座った。人にぶつかりながら歩く。人の存在は無視。公園で母親が見えないと知らない人の手を握った「手」が自分を元いた場所に連れて行ってくれると考え、手につながる『顔』を見てなかった。) ・トイレが自立できない。入園時までオムツを使用。幼稚園で小はOK。大はオムツに固執。 ・危険を認知できない。車のクラクションに反応しない。高いところに平気で登る。けがをすると親に触らせないように逃げた。泣き叫ぶので押さえつけて治療。本人の安全確保が最優先。 <3〜4歳頃(区立幼稚園 年少〜年中)> ・日常的な単語を少し理解出来るようになった。ほとんど状況判断で音は聞き分けられない。 発語は要求時に多い。食べ物の名称がほとんど。よく間違う。 ・親を意識し、甘えるようになった。体を使って遊んでもらうことが大好き。・人を意識するよう になった。面白がって友達を突き飛ばして、仕返しされたこともある。大声で怒鳴られると、相手を嫌った。好き嫌いが激しく、修正がきかなかった。極端な偏食で、小食。寝つきが悪く、睡眠時間は同年齢の幼児より短い。多動ではなかった。・うんちの失敗が多い。タイルが苦手で、タイル敷きのお風呂、公園やパーキングではトイレに入れなかった。今も少し苦手。 (エピソード)毎日、幼稚園のお迎えで「感激の抱擁」を繰り返した。幼稚園で過ごす時間が決まっていることが理解できてなかった。通うだけでも、かなり勇気が必要だったと思う。 <5〜9歳頃(武蔵野東幼稚園年長〜武蔵野東小学校3年生・地域の学童に通う)> ・年齢の近い子どもを意識するようになり、声に反応して家を飛び出し、公園で子どもの集まる 遊具に突進するようになった。相手の行動や気持ちは理解できない。 ・興味を持つと強烈に執着する。電車の模型、本、服や下着の色・柄など、多種多様のこだわりが激増。ドライバー用の白い手袋をはめて日常生活を過ごした時期もある。時間や順番が理解できず、待てなくていらいらすることが多かった。*TDRのゲストアシスタンスパスを要請 ・小2ぐらいから学校や集団行動に慣れてきた。学童保育に通い始め、遊びの集団に興味が出る。近所の子ども達が放課後、家に遊びに来るようになった。自転車・一輪車に乗れるようになる。 多少、見通しがついて、待つことも理解し始める。否定の単語や言葉のやりとりが出てきた。「お守り」に固執する。電車のおもちゃ、切り抜き等を持ち歩き、紛失するとパニックになる。 (エピソード;Nゲージの中央線三鷹方面先頭車両を30台以上、同じ本を何冊も買う) ・子どもに執着し、介助者(大人)を嫌がり、自己主張やプライドが出てきた。お金を持たずにひとりでコンビ二に行き、アイスやお弁当を持ってレジに行く。連日、通ったコンビニなので、店長の判断でお金を払わず持ち帰る。すぐに支払いに行ったが、今後を考えて、理解を求める「おてがみ」を配布。周囲に迷惑をかける単独行動に対応するため、外出時には名札をつけて、位置探査システムを利用する。コンビニ、パン屋、本屋から電話を頂いた。目を離せなかった。 <9歳〜12歳(武蔵野東小4年2学期に不登校→3学期から調布特別支援学校に転校> ・知り合い、知らない人を区別し、相手の様子を観察する。極端な好き嫌いが減り、同じ人間に 優しいときと意地悪なときがあることを理解した様子。生活年齢で、それなりに変化する。 介助者を認め、泣く、叫ぶ等で脅してコントロールしようとする。社会性の成長?問題も増加。 ゲームボーイ、スーパーファミコン、ビデオ、CD、レンジ等、機械の操作が上手になった。 ・わかりやすい単語で説明や交渉が可能になってきたが、逆に自己主張も増えたので、トラブル やハプニングが多発。気持ちの切り替えや立ち直りは早くなった。生活パターンが偏ってくる。 ・小4の2学期、「学校、お休み!」と登校拒否。1ヶ月休学して、調布の体験入学に行く。気に入って「幼稚園(調布)行く。学校(武蔵野東)お休み。」 転校手続きに1ヶ月程かかったが、本人はギャップを感じず、新しい学校に馴染む。比較的、穏やかに過ごせた時期。 <12歳〜17歳 調布特別支援学校中学部→(通常の進学)府中朝日特別支援学校高等部> ・小5からてんかんの薬を服用。小6になって毎日登校が可能になった。中2から障害児の放課後活動に通う。新しい人間関係、居場所を増やす努力をした。 ・身長が急激に伸びた中2〜中3の頃、身体の成長でホルモンバランスが崩れたのか、感情の起伏が極端に激しくなり、攻撃的な行動や破壊衝動、自傷が多発。絶叫して前転、壁に頭突き、ジャンプしてぶつかる等。体格が良いので(173cm,88kg)、破壊行動は強烈。支援の利用は、月100時間。ヘルパーから「冬の日本海(荒れない日がほぼない)」と表現された事もあるが、安定剤の服薬はなし。今も自傷や睡眠障害がきつく、生活困難度は非常に高い。 {問題点} ・コミュニケーションの手段(言葉やカード)を少ししか持たない。 ・恥ずかしい、汚い、迷惑など、「社会的な視点」の理解が難しい。 ・危険回避、体調への配慮(食事・清潔など)が難しい。 ・体験していないことを、説明で想像させることは難しい。 {介助者に望むこと}<基本的な支援の姿勢> できる限り、ひとつひとつの行動に関して、本人に意思確認して欲しい。逸脱した行為や問題行動を止めるときは、毅然とした態度を取る必要がある。対外的な行為も考慮して欲しい。「外出支援」は当日の体調や様子を観察し、予定や活動内容に柔軟に参加対応する等、本人の気持ちに寄り添う想像力を持つ努力を。外出後の様子など、日常を想定した支援を心がけて欲しい。 当事者主体として、本人の意思を尊重することは基本だが、学齢年齢では生活経験や余暇体験が限られている。本人に意思確認をすると、想像力に限界があるため、それまで体験したことのない新しい場所や活動について、「拒絶」することが多い。介助者と良好な関係があれば「新しい活動にトライする気持ち」が育まれるので、一緒に楽しむこと、本人が支援に慣れることが大事。 障害が同じでも、それぞれの性格や趣味があり、意思の伝え方が違う。人好きで明るい子もいれば、恥ずかしがりやの子もいて当たり前。障害に関する知識も必要だが、障害特性に当てはめて割り切らず、個性を知ることを大事にして欲しい。親でも違う人間だし、本人の気持ちはわからない。だからこそ謙虚に対応したい。性格は両親からある程度、遺伝する様子。反発しながらも理解できて、きついことがある。考え方、育ち方の違う他者(支援者)の存在は必要不可欠。 <自立生活のスタート> 2011年3月に府中朝日特別支援学校を卒業。4月から、社会福祉法人「にじの会」が運営する「にじの里」という通所施設に通う。2月18日で18歳になり、障害児から障害者に変更。成人扱いになる。成人判定を受け、愛の手帳は「2」 障害認定区分は「6」を取る。 高校入学時に事業所と将来について話し合いをした結果、高校を卒業後は、なるべく早く自立生活を始めることに同意していたので、4月から準備を始める。大きな課題は、 ・ ひとり暮らしをするために必要な「支援時間」と「ヘルパー」の獲得 ・ 住居の確保 支援時間の支給決定に関しては、「本人の状態(壊した家具などの写真を添付)」、「親の体調など現状維持の困難さ」、「ひとり暮らしを選択する理由について、介護者の意見」を資料として添付。ひとり暮らしをした場合の、生活状況、推定支援時間の表を作成。市役所と意見交換をしながら、6月の支給決定会議に持ち込む。結果、 身体介護 93時間 家事援助 134時間 行動援護 127時間 トータル 354時間 の支援費が支給決定される。 住居の確保に関しては、不動産屋に問い合わせたところ、「本人に重度の知的障害があり、介護者と住む」という条件に難色を示す大家が多かった。しかも、通所に通える地域で想定したこともあり、なかなか見つからなかった。結局、通所の送迎バスポイント(新規に設置可能)まで徒歩10分程度で、一般的な交通は不便であったが、大家と面接して事情を説明し、「近所から苦情が出たら対応すること。苦情が治まらない場合は無条件で転居する。」という条件を契約書に加えて、一軒家を借りることができた。家賃は7万5千円。 7月の自立に向けて、親は新居に搬入する荷物の整理、クーラー、冷蔵庫などの電化製品を購入&設置し、家具を揃えた。介護者は最終の介護スケジュール調整を進めた。通所には進行状況を報告し、引越し日程に合わせて、送迎場所を新居に合わせて設定して貰った。介護者との連絡は、連絡ノートでやりとりするか、直接、コーディネーターと電話連絡をすることになった。 7月1日に引越し完了 6月中に下見に行き、体験ショートを経験し、本人の荷物が揃っていたせいか、新しい環境でも普通に生活を始める。通所の送迎も問題なく、順調なスタートだった。 もともと変化に強い性格だったためか、実家への帰宅を要求することも少なかった。トラブルはあったが、日常生活の範囲内であり、介護者慣れしていため、特に緊張することもなかった様子。 2週間後に実家に帰宅したときは、テンションが上がって、過食&過飲の挙句、嘔吐という結果だったが、翌日、担当のヘルパーが迎えに来ると、拍子抜けするほどあっさりと帰宅する。 以降、2週間に1回程度、親と会い、実家に宿泊した。多少の混乱はあるが、新居に戻ることを拒絶することはない。今では新しい環境に慣れて、介護者にわがままな要求を連発している様子。先々、トラブルがないとは考えられないが、今の生活にかなり満足していると考えている。 |
TOP>supported-living > |