障害学会第10回大会(2013年度)報告要旨
有松 玲 (ありまつ りょう) 立命館大学大学院先端総合学術研究科
■報告題目
障害者差別解消法の課題
■報告キーワード
障害者・障害者差別解消法
■報告要旨
2013年6月19日に可決成立した障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法:以下、解消法)だが、今から「育てていく法律」等、各方面から指摘が上がっている。この言葉の意味するところは、育てていかなければ実効性に欠けることが目に見えているからなのだろう。
実効性に欠けるというのは、どういうことなのか。まず解消法には、差別とは何かという規定が曖昧で不十分でしかない。具体的に言うと差別とは何か、という、明確な規定がなく、第1条目的に「障害の有無によって分け隔てられることなく」という規定や、「合理的な配慮を的確に行う」という言葉が随所に見られるだけである。つまり、どういうことをしたら差別になるのか、という禁止する行為の規定について不十分で曖昧であるということだ。それは、この法律に基づいて訴えても訴えた行為自体が差別に該当するかどうか、規定がないから分からないというわけだ。分からないから裁けない、ということになる。
そして差別を解消するための支援措置も既存の体制を活用することになっていることも大きな問題点だ。既存の物では何もならないからこそ、新しいものが必要だったのではなかったか。それなのに、たとえ充実させるという規定があっても、活用ではなく新しい物を作らなければ実行力は変わらないだろう。
このような課題が山積された差別解消法ではあるが、本当はこのような穴だらけのものが出来上がるはずではなかったのだ。どこをどう間違えてしまったのか。そのことの一端を以下のような視点から明らかにしたい。
@差別解消法の審議過程
A差別禁止部会という組織
B差別禁止部会に障害者がいる意味(又は障害者委員が少ないということ)
C障害者の差別禁止と差別解消
D障害者差別とは何か
以上
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