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10月からの請求事務の電子化について

                                  
たこの木クラブ  岩橋誠治



その問題について、私の周囲の具体的な状況を述べつつ、皆さんからのご意見やアイデア又、まだまだ知られていない「地域の中で暮らす障がい当事者の暮らし」の中から電子化による問題点を共に考えていければと願っています。

  ご意見等、こちらへのコメントでどうぞ! ⇒ たこの木ブログ 再び・10月からの請求事務の電子化について 



2007年10月から自立支援法下のサービスの請求事務が電子化されるということになっています。

請求事務の電子化には、各市区が国保連にサービスごとの委託をする形になると聞いています。「事務の簡素化」「24時間の請求受付」等がうたい文句に宣伝され、請求ソフトの案内も毎日のように飛び込んできます。

日々、介助・支援に追われているものとしては、事務処理が簡素化されるということは歓迎したい面もあるのですが、本当に国保連の口車に乗って何の疑問も持たずに受け入れてよいのだろうかと疑念を抱いています。

本当に「電子化と言うのは本当に地域で暮らす障がい当事者にとって良い事なのでしょうか?」

単なる事務上の事で、「国が定める事に逆らっても仕方が無い」「日々の忙しさにそれどころでない」と見過ごしてしまっては、その先に待つ事柄にからめ取られてしまうのではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか?

私の住む町では、

 ・居宅介護は委託の方向
 ・地域生活支援の移動支援は委託しない

と聞いています。皆さんの市区ではいかがでしょうか?

聞くところによれば、

 ・「居宅介護は請求方法が概ね一緒なので、すべての市区が委託の方向」
 ・「移動支援は、市区により支給方法も請求方法も様々なので委託しない。
   (但し、移動支援の支給方法・請求事務をこの間居宅介護と同様に行ってきたし区は委託するかも)」

さてどうでしょうか?

わが市の担当係長によれば、「市が国保連に委託する際の1件あたりの委託単価が非常に高く、支給実態によっては、費用対効果で委託しない方が良いと判断する事もあるかもしれない」と言っています。(1件あたりの委託単価をご存知の方、教えてください)

委託するしないについては、その辺にしておいて私が一番危惧することは、請求事務が電子化(国保連に請求)することで、地域で暮
らす障がい当事者(特に、充分なサービスが支給されず様々な支援を使いながら自立生活をする知的当事者や精神当事者)の生活に大きな影響を及ぼすのではないかと言う点です。

影響を及ぼすと思われること(翌月・翌々月と言う言葉が多くなるのでここでは9月実施として、月数で表します)

 @請求締切日は「実施月の翌月10日(9月実施10月10日締め切り)まで」と有無を言わさず定められ、10日を過ぎると
  11月10日までの請求に回されてしまう点。

 A「家事」「身体介護」「行動援護」のサービス類型は、週間プランによっておおよその事は定められている。しかし、
  実際の人の生活においては、本人の体調や予定によって変わるのはあたりまえなので、実際の派遣に則した請求を
  行うとなれば、 月末で閉めた上で翌月10日まで似実施内容を確認の上請求するのは厳しい。さらに、移動支援は
  別立てなのと、すべての支援について保障されてない為事業所の持ち出し分や個人負担分もあわせ請求するとなる
  と10日締め切りは難しい。

 B一事業所だけで派遣を担っていればAも実施月の下旬に大よそめどを立て請求の準備を早める事は可能かもしれ
  ない。しかし、知的当事者の自立生活においては、一事業所だけその派遣を担うとどうしても事業所の意思が優先さ
  れたり、当事者に対する一方向の見方になるからと複数事業所からの派遣を受けることを原則としている。複数事業
  所と契約しているとAに加えて、事業者間での調整も生まれさらに10日締め切りは厳しくなる。

 Cシステム上の話として、(翌月・翌々月と言う言葉が多くなるのでここでは9月実施として、月数で表します)9月に実
  施したものを10月10日までに請求する事になっている。(間違いがなければ、11月15日をめどに支払いが行われる)
  しかし、請求に間違いがあった場合、国保連からの通知は、11月初旬になる。通知を受け取った事業所は、一旦初め
  の請求を取り下げ再度請求を行うことになるが、暦の関係等で11月10日の間に合わなければ12月10日分の請求に
  まわされてしまう。すなわち、「24時間いつでも請求可能」と言いつつ、入力ミスがあれば9月実施の派遣分の請求が
  12月になるかも知れない。そうなれば支払いが1月となり、実施月から数えて、支払いが5ヵ月後になってしまう。

 Dそのような入力ミスを起こるのは、当事者の生活実態に即して派遣するからであり、又、相当数の時間を支給されて
  いる人である。相当数の請求をすると言うことは当然ヘルパーさんへの支払いも多く、約5ヶ月間の運転資金を事業所
  が確保しなければ、事業所として回っていかなくなる。

 E契約時間と警告表示について。現在国は、月の総支給時間を超えなければ契約時間を超えて請求してもかまわな
  いと言っている。曜日ごとの派遣を複数事業所で担っていれば、4週5週の月があり当然のごとく契約時間を一社は超
  え、一社は余す事は起こりうる。しかし、電子化によって、契約時間を超えると警告表示が出されると言う。警告表示
  が出たからといって請求できないわけではないが、国保連は警告表示のあるものについては市の審査を受けた上で
  判断するらしい。その場合、市のやり方として警告表示のある物は受け付けないとなったなら、国保連はただ事業所
  に差し戻す事になっている。又、自立支援法になってから家事・身体介護の1回あたりの派遣時間も定められるように
  なっている。現状の市は「実際の派遣に則して」とあまり1回あたりの時間数に拘っておらず、月トータルで越えなけれ
  ば良いと行っているが、これまた「警告」表示が出てくる。国保連担当者曰くは「そのようなケースについては行政を充
  分な打ち合わせをされた方が良い」と言う。国保連が一括事務を行うと言いつつ、レアなケースについては事業所と行
  政が今までどおりやり取りしなければならない様子。

その他、いろいろなケースがあると思うが、結局当事者の生活実態に即した派遣を行おうとするれば、事業所は締め切り
に追われ、入力ミスをすればその責任を事業所に負わせる。(国保連は高い委託料を受け取る)

現在行政や国保連に対しては、長時間の派遣を受け自立生活をする当事者については委託からはずすことができないかと問い合わせしている。なぜなら、これまで書いてきたことは電子化によって起こる問題点であり、これまでもいろいろ複雑に派遣を行っていてちょくちょく間違いを起こすも、市は概ね実施月の2〜3ヵ月後の支払いを行っている。

それは、単に行政努力だけでなく、複数事業所の請求内容の確認をこちらが行ったり、間違いがあった場合の修正を市と事業所で協力し合いながら行っているからである。

多くの行政は事業所に対し、この複雑な制度と請求事務に努力する事業所に対しその努力に感謝し、事業所も行政が支払い事務を可能な限り急ぎ事業の円滑な遂行に努力している事を認め、双方協働してその事務にあたっている現実がある。

しかし、国保連・電子化の流れは、そのような関係性を分断し0か1と言う無機質な世界へとコマを進めようとしている。そして、その先にあるのが介護保険との統合である事は見え見えで、法改正・制度改正に敏感な当事者たちも事務レベルの話となるとさして問題性を感じていないように思う。

が、この先「理念はそうでも実際の運用は」と事務を担う仲間と支援を担う仲間そして当事者とを分断するする種をこっそりと植え付けられてしまうような気がしてならない。

例えば、現状当事者の生活に即し複雑な派遣を行っていても、給付費の支払いの遅れるとなると事業所の体力を求められ、体力の続かない事業所は「当事者の生活に即した」等と言えなくなる。そして、お決まりの派遣・計画通りの派遣を行うようになってしまうのではないだろうか。さらには、当事者の自立生活の支援なるものは、(特に知的当事者に対しては)単価が低く設定され持ち出しまでしなければならず、さらにその締め切りが遅れたり、入力ミスによって支払いが遅れるなら、そもそもそのような依頼は受けないと言う事業所が出てくるのではないだろうか?現実的にも、支給額の不足から自立生活の支援を躊躇する事業所の相談が多々あるのに、この先さらに厳しくなるように思う。

自立生活をする当事者に対しダイレクトペイメントの考え方がある。知的当事者においても同様にすべきだと思う。しかし、自らがサービス調整を行えない知的当事者においては、ダイレクトペイメントそのものに対する支援も必要で、「国保連に委託する金があるならサービス計画作成費をもっとたくさん出せ」とも言いたいがその話は又別に機会に!

ぜひ皆さんからのご意見や想いをお待ちしています。


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