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障害者自立支援?法、最初っからやり直すべし!
真のパラダイム転換/ポスト基礎構造改革のために 岡部 耕典
05.02.22→05.03.07更新
◇「基礎構造改革」を脱構築する 基礎構造改革とは、歴史的にみれば、財務省(旧大蔵省)のめざす「国民負担率抑制」(第二次臨調答申)へ厚生労働省(旧厚生省)が対抗するための「自主財源確保」(社保審平成7年勧告)の制度的展開であり、戦前にはじまる伝統的な年金保険制度を骨格とし、介護保険制度をサービスモデルとして障害福祉をはじめとする他の各福祉制度を再構成・再編成することで、厚生労働省の政策誘導と省益確保の枠組(パラダイム)を「補助金による誘導」から「制度そのものによるコントロール」に切り替えようという政策動向であるといえる。 ◇「拙速」の誤りを二度も繰り返すことは許されない 現行の支援費制度においても、その実現のための法改正は、制度実施にさかのぼること3年前の2000年に行われている。そして、当時も、「法改正は大きな枠組みを決めるもの」と説明され、具体的な制度設計や運営基準は、担当課長会議とQ&Aでモニターされながら、政省令で発表されてきた。しかし、今日、支援費制度における「欠陥」と断じられたもの、すなわち、地域支援費が裁量的経費に留まってしまったこと、旧制度の時代の細かい予算費目に拘束され、予算不足の際に融通もできない硬直した制度となっていること等は、全て2000年の法改正の段階でビルドインされていたものである。今回の「グランドデザイン」の政策立案および自立支援法としての法制化の過程において、再び同じ過ちが繰り返されようとしていることを看過すべきではない。 ◇政策・制度の決定過程にこそ「基礎構造改革」が必要 いわゆる「タコ部屋方式」に象徴される「政策官僚主導で、その強力なコントロールのもとにおかれた制度設計」という手法自体に反省の目が向けられるべきである。仮にも「利用者本位」と言うならば、それは政策・制度の決定過程にまず適用されるべきであり、法案の決定は、新制度についての議論を尽くしたのち、具体的な政策への利用者・事業者との合意形成がなされた時点で行うべきである。 制度の「持続性・信頼性」の確保を求めるならば、その決定過程こそが「透明」でなくてはならない。今度こそ、障害者(児)に対して、真の「利用者本位」と「自立生活」が担保されるシステムとするためには、その費用負担のしくみについては国民的議論、サービスそのものありかたについては、利用者側との合意形成が不可欠といえる。 ◇検討に値するオルタナティブは存在している 社会福祉制度の再構築を目指すとき、「財政改革・地域福祉・利用者の権利主体化」という連立方程式の解を「市場化(民営化)」と「介護保険モデル」と決め付けてはならない。 現状の社会福祉の制度に対して、 @ ダイレクトペイメントの導入(真の利用制度化の実現) A パーソナルアシスタンス中心のサービス設計(脱施設・ハコもの福祉からの脱却) B 当事者団体/福祉NPOの活用(福祉の市場化/民営化ではなく供給主体の多元化を) を行うことで、「財政改革・地域福祉・利用者の権利主体化」の両立は、充分可能であり、介護保険制度との統合に疑問をもつ障害当事者/支援者は、そういうオルタナティブを求めている。 ◇「ポスト基礎構造改革」のために ―「連帯(互助)・福祉国家」から「共生(再分配)・福祉社会」への転換― ポストバブルの10年間は、戦前から基礎構造改革まで一貫して厚生労働省の社会政策の基盤であったコーポラティズム(職域主義)を大きく変質させ、そこに依拠してきた公的年金・社会保険制度という装置も、機能不全を起こしつつある。 求められているのは、社会保障/福祉制度の基盤に対するポストインダストリアリアル(脱工業化)とポストモダン(脱近代化)であり、前提として、産業社会と企業を基盤とする「連帯(互助)」という共同性の原理と制度を、地域社会(共同体)と生活者(生きとしいけるもの全て)に根ざした「共生(再分配)」の原理と制度へと転換することが必要である。 |