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障害程度区分認定審査会委員名の公開・非公開について
 =自立支援法をあらゆる角度から検証する一環として=

              コミュニティサポート研究所  齋藤明子


 自立支援法によるサービス提供がいよいよ10月に始まる。政府は、今頃は
障害程度区分認定調査も終了して支給量も決定していると予想していたに違
いない。ところがどっこい、障害者の友達に聞いてみると「認定調査もまだ受け
てないよ」という人もいれば、「認定調査は受けたけどまだ何も言ってこないの
よ」という人もいる。福祉サービスがほとんど無かった高齢者向けの介護保険
に比べ、長年サービスを受けてきた障害者はさすが手強い、と厚生労働省も
思っているのではないか。高齢者とその家族にとっては介護度とサービス量と
のつながりを即座に把握できなかった人も最初は少なくなかったと思われる。
しかし障害者にとって障害程度とサービスとのつながりは精神障害者を除い
て「ピン」と来るものである。これまでの区分では1ランク違えば無料が有料に
なったり、介助者が含まれたり、含まれなかったりした。
 そのように詳しい障害者に対してサービス支給量に決定的な影響を及ぼす
障害程度を区市町村が一律、一方的に決定しようというのは、私には無謀な
冒険的事業にしか見えない。揉めて当たり前だし、障害当事者が自らの生活
を確保するためにも生活するのに必要な量をかちとるまであきらめずにしっかり
主張すべきであろう。

 障害程度区分決定の関所ともいえるのが「障害程度区分判定審査会」であ
る。この関所をブラックボックスにしてはならじと地業研では様々な角度から学
習・調査に乗り出した。「事実を知らずして語るなかれ」である。別表はインター
ネットにも公表されている「市民自治を目指す三多摩ネットワーク」が東京都の
市、全てを調査したものである。この表から様々なことが読み取れるが今回は
委員名を公開しているかどうかに絞って、各市の姿勢を比較してみた。

1.委員名の公開、非公開

 全26市中委員名「公開」が16、「非公開」が9で積極的に公開はしていないが、
非公開という規定も無い市が1である。ただ「非公開」と回答している市に氏名
と選出区分は公開しているところがあり、ほぼ3分の2の市が公開しているといえ
る。同じことを介護保険認定審査会(以下、介護保険と略す)で見ると「非公開」は
5市で、障害程度区分判定審査会(以下、障害程度と略す)より少ない(自宅住
所、電話などの個人情報を公開しないのは当然であり、氏名と選出区分が明ら
かになっていれば「公開」と解釈した)。
 障害程度、介護保険ともに「非公開」の市は府中市、日野市、あきる野市であ
る。他市が公開して問題ないと考えているときに、両方とも公開しないという3市
の頑固な姿勢は目立つ。

2.非公開の理由

 上記の3市の理由を見てみよう。あきる野市は、「情報公開条例により非公開」
だそうだ。民主主義社会では市の主体は市民である。従って原則が公開で非
公開は例外であるべきだ。
あきる野市は「審査会委員の氏名」がその例外と考
えるのだろうか?審査会は制度に則った公的な機関だし、委員に支払われるの
も税金である。審査の公正さや迅速性が疑われたときその責任を負うべきなの
は委員である。委員名がはっきりしていなければ責任の所在まであいまいになっ
てしまう。
ひょっとしてあきる野市の委員は「責任を負うのはゴメンだ」と市に言っ
たのであろうか?そして市は「責任は私たちが引き受けますから、思うままにや
ってください」とでも言ったのであろうか?
 府中市は、非公開は判定の中立・公正性の確保のためで利用者や認定申請
者が直接委員に接触しようとしたり、便宜要求を防止するためだそうである。この
理由を見ると府中市はまず審査委員を信頼、信用していないし、次に障害者や高
齢者市民及びその関係者を全く信用していないのだな、という印象を持つ。だれ
でも府中市が挙げたようなことが起こるかもしれないとは考える。しかし委員名を
公開している市は、たとえそのようなことがあっても委員が取り合わないであろう
し、大部分の障害者や高齢者は委員に直接働きかけるのでなく、市の結果を待
って不服があればしかるべき手順を踏んで申し立てようとするだろう、と考えたに
違いない。府中市は、非公開という形で審査委員を、押しかけてくるかもしれない
少数の障害者や高齢者からお守りしましょう、ということなのか?ずいぶん市と市
民の間がトゲトゲしいのだなぁ。
 日野市は、障害程度については「審査会自体が非公開であるため、現段階で
は積極的に公表はしていない」で、介護保険が「日野市介護審査会運営要綱に
基づく」となっている。率直な議論ができるように審査会を非公開にすることと、審
査委員名を非公開にすることとは違う。介護保険の理由からも、市のあいまいな
態度がうかがわれる。
 障害程度、介護保険共に公開しているのは、 武蔵野市、調布市、小平市、国
分寺市、国立市、福生市、清瀬市、武蔵村山市、稲城市、羽村市、西東京市、で
委員名を秘匿しているわけではないのは立川市、三鷹市、狛江市である。
 障害程度が公開で介護保険が非公開は多摩市のみで、それ以外の市は介護
保険は公開なのに障害程度は非公開である。理由は本当にまちまちで、まちまち
であることが誰もが了解できる普遍的な根拠でないことを示している、ともいえよ
う。「審査に支障」がいくつかあるが、介護保険では支障が出ると思わないのに、
障害程度では支障が出ると思うのは障害者の社会性を疑っており、「障害者差別
か?」などと勘ぐってしまう。

 まぁ、「介護保険も最初は非公開だったんじゃないの?そのうち公開してもどうっ
てないことがわかって障害程度も公開になるよ」という意見もある。