TOPshinsakai

「行政当局が障害の程度を認定するということ

                    
山下恒男(1977=2002) 「反発達論」現代書館(p.87)

 障害者が「社会・公共」から適切な援護措置を受けようとするならば、自分たちが障害者であることを「科学的」にも証明し、自他の確認を得る必要があるのである。これは具体的にいえば、行政当局が障害の程度を認定することである。

 そこで、障害者とそうでない人間をわけるところの「科学的・客観的」な基準を設ける必要が生じてきて、それを専門家に作らせることになる。そして、行政当局はそのような専門家である医者や心理学者などの作った基準をただあてはめることによって障害者の認定を行うわけである。

 ここにみられるのは、一人一人の健常者が障害者に対する対応を行政当局に求め、行政の当事者は「大切な税金を使うのだからというわけで、障害の認定やその対応を専門家としての科学者に求め、科学者は「障害者のための科学」と称してその要請に応えるという<いたちごっこ>である

 その結果、障害者の問題は、税金の何パーセントをどのように使ったら最も効率的かという、一種の社会工学の問題へと還元され、また政治のかけひきの問題とされることで、私たち一人一人から遠ざけられてゆくのである。

TOPshinsakai