2002年5月21日 朝日新聞

悪用目立ち障害者用カード一部廃止 東京ディズニーR


2種類になった東京ディズニーランドのゲストアシスタンスカード

 東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)を運営するオリエンタルランド社は20日、障害のある入園者向けに発行していたカードの一部を廃止した。待ち時間なしでアトラクションに入ることができるもので、自閉症など「待つことができない障害」を自己申告してもらって発行していた。しかし、悪用されるケースが目立ち、利用者の公平性が保てなくなったという。障害児の親などからは存続を求める声も上がっている。

 このカードは「ゲストアシスタンスカード」。00年4月に導入され、今年4月だけで約3300枚が発行された。▽例えば劇場タイプのアトラクションで音源や舞台に近い席に座れる(内容は手書き)▽行列に並ばず、時間が来れば利用できる▽速やかにアトラクションを利用できる−−の3種類がある。このうち「速やかに」を廃止した。大半が「速やかに」のカードを選ぶという。

 ところが、車いすに乗ってカードを申告しながら、園内に入ると立ち上がって走っていく人もいるという。オリエンタルランド広報部は「心ない人が申告しても区別ができない。なぜこの人が裏口から入れるの、という声もある。『速やかに』のカード発行が予想以上に多く、運営も難しくなった」と廃止の理由を説明する。

 ディズニーランド、シーともカードは入園後、総合案内で自己申告するだけで発行される。障害の内容を聞いたり障害者手帳の提示を求めたりしない。障害を説明する苦痛への配慮からだ。

 先に導入していた米国では、カードについて広報したとたんに悪用されたといい、TDRはカードの存在を公表してこなかった。利用者から問い合わせがあった場合のみ対応している。

 長男(9)が自閉症という東京都三鷹市の自営業男性(46)は「カードには、子どもがパニックになっても大丈夫という安心感があった」と残念がる。長男は人込みで突然泣き出したり「帰りたい」とわめいたりしてしまう。待ち時間に耐えられない時に限って使ったといい、「子どもはディズニーが大好きで行きたがる。すべての子に夢を与えてくれるなら、普通に遊べる最小限の助けがほしい」。


 不正利用をなくすためオリエンタルランドは診断書の提示を一時求めたが、運用が難しく断念。広報部は「カードは障害のある方にも楽しんでもらえるように考えたシステムのひとつ。今回の廃止もこれで終わりではなく、新しいシステムを考えていきたい」としている。(17:02)

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