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Enough For Today?
オリエンタルランドの返事 4月15日付


Enough For Today?                                     平成11年4月15日
代表 岡部 耕典 様

 拝復 春の装いも美しく、岡部様には益々ご清祥のこととお慶びもうしあげます。

さっそくご丁寧な返信を頂戴し、恐縮に存じます。この度のお手紙を拝読し、前回のお手紙以上に"スペシャル・アシスタンス・パス"システム導入に対するご要望の強さを痛感いたしました。
お手紙のなかにございましたいくつかのご質問につきまして、改めまして回答をのべさせていただきます。

まず、"スペシャル・アシスタンス・パス"の役割、定義について説明させていただきます。前回の返信のなかでも触れておりますが、東京ディズニーランドにおいては車椅子利用の方々(および同等の障害をお持ちの方々)に対する対応は、おおよそ整備されております。"スペシャル・アシスタンス・パス"はそれ以外の(あまり言い方は好ましくありませんが)外見的に障害をお持ちであることが判断できないようなお客様にたいして、可能な援助がスムースに行えるようにその内容を明記し、お客様に感じられるご不便を僅かでも低減し、ディズニーの世界をより多く体験していただくことを目的とするツールとして考えられております。そして、このツールには、障害や援助の内容によって複数の種類のものが用意される予定です(アメリカも同様)。
 岡部様の文面にもありますとおり、アメリカにおいてこのシステムの発行を受けるためには、特別な証明書等は必要としておらず、あくまでお客様からのご申告に基づいて発行をいたしております。その背景には、アメリカではご当人の障害の内容に関して尋ねることは、法的に禁じられているという理由が存在していると聞いております。

このシステムの目的は、そのお客様にとってどのような援助を行うことが最良の手段なのかを、スムーズな形で従業員に伝えることであり、その手段のひとつにアトラクションの待ち時間減免というものが用意されているものであります。この他にも、聴覚に障害をお持ちのお客様には「アトラクションの概要、台詞を書いた本をお渡ししてください」とか、視力が極端に弱いお客様には「最前列で鑑賞ができるようにしてください」といった内容が用意されています。現在東京ディズニーランドでは、こうしたさまざまな援助手段についても同時期に導入・稼動ができますよう準備を進めておりますが、アトラクション側の体制につきましても平行して作業が進められる必要がある以上、長い時間が必要になることをご理解賜りたく存じます。

また、東京ディズニーランドの場合、学校団体が集中する時期がいくつか存在いたしており、特に養護学校関係の方々には、気候の安定した季節に集中する傾向が非常に強く表れております。アメリカにおいてはこういう実績がないようで、私達の参考になるデータが存在しておりません。ここで私共が懸念しておりますのは、団体でいらしたお客様にこのシステムを適用し、その全てに待ち時間の減免を内容をだしたとしますと、あるアトラクションにおいて通常の待ち列とは別に待ち時間が生じることも考えられ、このあたりの問題を調整することも導入までの課題の一つであると考えられております。

教育という面につきましては、アメリカではアトラクション・キャストに対する障害をお持ちのお客様への対応に関する全体的な教育と、"スペシャル・アシスタンス・パス"を発行しておりますシティ・ホールを担当するゲスト・リレーション・キャストに対する特別教育プログラムが構築されており,東京ディズニーランドでも"スペシャル・アシスタンス・パス"を導入するにあたっては、同様のプログラムを構築すべきであるという提言を受けております。現在、そのプログラムを策定中であり、併せてアトラクション担当部署の従業員に対する「お客様の介助方法」に関する教育を促し、多岐にわたる障害に関して今までになかった対応ができる体勢を整えることを目指しております。
"スペシャル・アシスタンス・パス"システムの導入には、今までご不便をおかけしていたお客様に明確に対応しなければならないという、いわば使命感のような感覚が私共にはございます。そういったことから、充分な知識も無く失礼な対応が生じないようにという意味合いで、前回の文面に「専門的」、「高度な」教育といった表現を用いましたが、いささか語弊があったことを反省いたしております。

導入までのスケジュールにつきましては、アメリカに存在するシステムではあっても、東京ディズニーランドで導入するにはディズニー本社の承認を得ねばならず、この工程には通常数ヶ月単位の時間がかかるのが実情でございます。このことを踏まえたうえで、計画を立て作業を遂行するものですが、本年度内にシステムの構築ができることを目標に動いているとお考えください。
最後になりましたが、アメリカにおいてこのシステムの存在を公表していないという件につきましては、先にお伝えしました理由の他に、ごく一部ではありますが、心無いお客様の悪用・濫用ということを危惧していることが大きな理由と聞いております。私共もこのシステムの存在を、必要なお客様に対し大々的に告知することができれば、従来とは比較にならないほどお役に立てるであろうことは間違いないと確信いたしております。
しかしながらアメリカ側の懸念している秩序あるパーク運営を維持するためには、同様の方針を受け継ぐこともやむを得ないと現段階では判断いたしますが、今後このシステムを必要とされているお客様にとって、私共がどのように情報を提供してゆくことがベストなのか、皆様のご要望を留意した上で決定して参りたいと考えております。

岡部様の文面に「オピニオンリーダーとしての社会的影響力」という部分がございましたが、私共もこうしたバリアフリーに関する施策に限定することなく、様々な面において常にリーディングカンパニーであることを目指して努力を重ねて参る所存でございますので、今後共ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

岡部様のご健康とご多幸をお祈りし、書中をもちまして返信とさせていただきます。

敬具

                                            東京ディズニーランド
                                            ゲストリレーション
                                            スーパーバイザー
                                            ○○ ××

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