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Enough For Today?
オリエンタルランドへの手紙(3月17日付の手紙への返事)

株式会社オリエンタルランド運営部ゲストリレーション
スーパーバイザー
○○×× 様

拝復 早春のみぎり、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。
さて、3月10日付のお手紙に対し、大変ご多忙中のところ早速のご返答誠にありがとうございます。お願いがかなえられるかということについては、「重要性については理解しており、実現を前提に検討中だが手続き上の問題で時期未定、早急な実施は困難」というように要約される内容と理解いたしましたが、正直なところ、ご姿勢については感謝、現実的状況については落胆、というところです。しかし、ご返事内容も長文にわたる丁寧なものであり、CSと社会貢献、福祉に対する貴社の真摯な姿勢に感じ入っております。
私達といたしましてもその貴社の誠実なお姿に沿いながら、かつ、早期のホワイトカードの実現をなんとか後押ししたいと思っております。それには、貴社のお考えと私共のお願いの正確な理解に基づく相互協力が必要と思い、以下、誠に失礼ながら、17日付お手紙を全文引用させていただき、(「>」でしめしましたのが、引用部分です)そこに注の形で、説明たりなかったところの補足、再度のご質問をいれさせていただきましたので、大変恐縮ですが、ご理解およびお答え願えれば誠に幸いです。
貴社のますますのご発展と皆様のご健勝をお祈り申し上げております。

以下、引用およびコメント、ご質問です。

> 拝復 早春の候、いかがお過ごしでしょうか。
>日頃より岡部様には東京ディズニーランドにご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。
>過日は東京ディズニーランドインフォメーション・デスク宛にお手紙まで頂き、大変恐
>縮に存じます。また、ご連絡が遅くなりました非礼を、お詫び申し上げます。
> 岡部様からのご要望の件、真摯に拝読させていただきました。

ご丁寧にありがとうございます。

> 東京ディズニーランドは、ウォルト・ディズニー・エンタープライゼズ社との業務提携により、
>弊社(株式会社オリエンタルランド)が運営をいたしております。運営に関するポリシ−や手順等は
>アメリカのディズニー・テーマパークに準じて設定をいたしておりますが、アメリカ側で追加導入された
>システムが自動的に東京ディズニーランドに組み入れられるような機構は存在しておらず、その全てが
>同じではないという実情を第一にご理解いただかなければなりません。

はい、お電話でも最初の手紙でも、それは十分前提とし、理解したうえで、あくまで貴園へのお願いをしているつもりです。

> 今日までに私共も日本国内のバリアフリーに関する動向を注視し、パークを訪れる全
>ての人に優しい施設環境の提供と、不便を感じることのないパーク運営を目指し、改善・
>検討を続けております。


そういう貴園の社会的かつ先進的姿勢を知るがゆえ、また、それが一個人の理解でなく、日本の社会の中での一般的な貴園に対するイメージであるからこそ、オピニオンリーダーとしての社会的影響力もご理解いただいたうえ、是非ともお願いしたいのです。

>この度岡部様よりご要望をいただきましたように、車椅子の利用や歩行補助具の利用と
>いった移動に関する機能以外に障害をお持ちのお客様方への対応につきましては、残念
>ながら現在のところ明確なシステムが確立されておりません。アメリカ側で導入されて
>おります"スペシャル・アシスタンス・パス"につきましては、私共も同等システムの
>導入に向けて検証、検討を進めております。


"スペシャル・アシスタンス・パス"("ホワイトカード"の正式名称ですね。以降このお手紙のなかではそう表記させていただきます。)が、導入に向けて検証、検討をすでに進めている、というのは誠に素晴らしい!さすが貴園であると思います。

> ここでご理解いただきたいのは、このシステムがアメリカ国内で稼動しているとは申
>せ、即座に東京ディズニーランドにも導入・稼動ができるというほど、安易な内容では
>ないということです。このシステムを導入するには、発行する側、受ける側の双方に対
>し、障害に関する専門的な教育を施す必要が発生いたします。


申し訳ありませんが、ここらあたりからが私の得た情報と矛盾しており理解できません。お手紙で申し上げた通り、私共のスペシャル・アシスタンス・パスに対する主たる情報源は、同じ障害の子供の一家の米国滞在記であり(抜粋コピーは以前同封いたしました。本の名称は、「アメリカ障害児教育の魅力」佐藤裕・佐藤恵利子 学苑社 1400円)貴園からの直接情報ではありませんが、そこには、「申請に対し、医師の診断書があることが望ましいが、自閉症の場合は必ずしも必要でなく、小学校関係の書類でも十分」との説明をディズニーワールドから聞いており、実際の発行においては、サービスセンターで「自分の子供が自閉症であり、待てない障害である」旨伝えただけで、なんらの証明の提示も求められず、5分で発行されたと記されています。ここにおいて、どういう「発行する側、受ける側の双方に対し、障害に関する専門的な教育」が必要なのでしょうか?できれば、スペシャル・アシスタンス・パスに対する貴園としての定義、説明をいただけたら幸いです。

>アメリカでもお客様からのご申告全てに対し、このシステムを発行しているものではな
>く、お客様のご事情に合わせた援助がなにであるかを的確に判断できる知識をもって発
>行をいたしております。


前述のとおり、少なくとも自閉症に対しては運用上無条件に出しているように書かれています。係員も、専門的検査等でなく、「自閉症であるという自己申告」のみで発行したようですが。

> また、このシステムは、ただ単にアトラクションの待ち時間を減免、回避することを
>目的としているものではなく、何らかの事情を有するお客様に対し、助力しうる内容を
>記し、その内容をスムーズにキャストに伝える手段として用いられているものでござい
>ます。

実物コピーがありましたので、単なる列の優待のみではないことは理解しております。しかし、実物冒頭に、The guest presenting this pass should be offered assistance as indicated below. とあるあとに、The guest and his/her party may enter attractions through designed Disabled Guest entrance where applicable. か、Others______________
かをチェックボックスで選ぶようになっており、明確に列の優待を主たるアシストと目したものであるようにみえます。これが貴園で主たるアシストとなる必然については、米国別法人含む貴園の「アトラクションで待つこと自体をアトラクション化している」という特徴が、それが一般来場者にとっては楽しみとなってもある障害もつ人達には、車椅子の段差にも勝るとも劣らない障壁を作ることになってしまうことに気付く人には自明の理のように思えます。

> このような正確な判断を下すためには、高度な専門知識が要求され、その教育を行う
>側にも当然それを上回る知識と情報が要求されることは避けようがない事実としてご承
>知いただけるかと存じます。


上記Others___________ が、アシスト内容である場合は、その内容が何を想定しているかによるかもしれませんが、少なくとも、カード提示者に対して、The guest and his/her party may enter attractions through designed Disabled Guest entrance where applicable.というサービスを提供することについて、高度な専門知識も教育も必要でしょうか?

> 日本は、欧米諸国ほど、障害に関する教育やマナーが浸透していないという決定的な
>弱点があるかと存じます。私共と同様業種であります百貨店や航空旅客業では、接客に
>あたるそのほとんどが定着勤務の社員であり、高度な専門教育を施すことでそのままの
>レベルを維持・向上することが可能な環境にあります。しかし東京ディズニーランドで
>は、最前列で接客にあたる従業員のほとんどが就労サイクルの短いパートタイム型(非
>定着型勤務者)であるため、この種の高度な専門教育を行える環境には及んでおりませ
>ん。いかに内容を凝縮し短時間で行ったとしても、実際に対応を行う場面では大変デリ
>ケートな内容であるため、確実な対応が行えるという確証には至っておりません。


こここそが、逆にまさにスペシャル・アシスタンス・パス導入の阻害要因ではなく、それがすぐに必要な理由であることをご理解ください。先だってのお手紙に書きましたように、貴園のインフォメーションデスクにカードの件を問い合わせた際の返事は、「(カードはないし、検討もできないので)個別にアトラクション毎に(障害の有無とか待てない必然とかを細かに説明して)頼んでほしい。ただし、それを受け入れるかどうかは、係員の判断による」というお答えでした。大変失礼ながら、こういう判断・非定型業務こそが、非熟練パートタイマーにとっては、最困難最悪の業務なのではないでしょうか。これをクリアーする手段がスペシャル・アシスタンス・パスであって、これなら、「ここに書かれたサービスを、提示した顧客に即座に実行する」という一言をマニュアルに書いておくだけでほとんど解決するのではないでしょうか?

> 私共が提供するサービスは、そのすべてが完璧であるとは申せませんが、その完成度
>が低いまま実際のサービスに組み入れることは避けなければなりません。こうした点に
>つきましては、ディズニー側の検証・制約を受けるものでもありますので、どうしても
>時間がかかるものであるということをご理解いただきたく存じます。


貴園のその姿勢には全く異論はございません。が、先ほどから述べていますように、現実的かつ具体的に考えてみますと、抽象なお言葉で受ける印象よりは、実現への障壁は少ないようにも思えますが。それに、私が例示した資料は全て米国での体験に基づくものであり、それが、米国での実施の現状である以上、これを米国の実施のまま実行することが「ディズニー側の検証・制約を受ける」場合、非となるわけがないでしょうから、もっと自信をもって検討を進めていただければ幸いです。

> 現在東京ディズニーランドにおいては、車椅子ご利用の方への対応が最も先行してお
>り、今後はその他の障害を有する方々へのサービスを充実させて行くべく活動を行って
>おります。その中のひとつに"スペシャル・アシスタンス・パス"も確実に含まれてお
>りますが、前述の事情により現時点ではその具体的な導入の時期を明示することはでき
>ません。

私はもちろんのことですが、車椅子の方等へのために施設等をバリアフリーにすることは賛成ですし、是非推進していただきたいと思います。しかし、スペシャル・アシスタンス・パスについては、施設改造等にほとんど費用がかかるわけではなく、(貴園のアトラクションのエントランスのほとんどには、すでにスポンサー等のVIP対応の為の優先入場ゲートがあるように聞いております。また、それがない場合でも、最前列まで歩いて行って許可求められないような仕組みになってるアトラクションは、利用経験上からいっても思い当たりません。)実施についての予算等の制約は少ないかに思います。是非、早めのご検討いただけたら幸いでございます。
しかし、「(実行を前提にして検討している制度の)その中のひとつに"スペシャル・アシスタンス・パス"も確実に含まれております」というのは、大変ありがたく、かつ嬉しいお言葉でした。そうであるなら、「具体的な導入の時期を明示することはできない」にしてもせめて「いつまでに(導入の時期含めて)検討を終える計画か」というスケジュールは教えていただけませんでしょうか?

> また社内機構的なことで恐縮ではございますが、このお手紙の宛先に「バリアフリー
>専門チーム」とありましたが、現実的にはパーク運営部門、施設計画・整備部門、教育
>部門にて構成される協議体、「バリアフリー検討チーム」であり、バリアフリーに関す
>る事項の決定機関、もしくはバリアフリーに関する強力な権限を有するといった機関で
>はございませんので、誤解の無きようお願い申し上げます。


 お電話では、△△様よりは、確かに「専門」と伺ったつもりでしたが、それは失礼いたしました。今後のお手紙は貴殿あてに差し上げたく思いますが、それでよろしいでしょうか?

> こうしたこと等から、もうしばらくの間ご不便をおかけすることになりますが、諸事
>情ご勘案のうえご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


とんでもございません。こちらこそ本当にお手数かけますが、よろしくお願いいたします。

> 最後になりましたが、ひとつご留意いただきたいことがございます。それはウォルト・
>ディズニーワールド、ディズニーワールド共に、この"スペシャル・アシスタンス・パ
>ス"というシステムの存在を対外的に公表いたしておりません。これはディズニー・テ
>ーマ・パークが基本的に万人に平等であるという理念に基づいていることと理解いただ
>けますでしょうか。岡部様の書面の中に、貴店のホームページへの掲載というお話がご
>ざいましたが、この点をご配慮いただきたく謹んでお願い申し上げます。


 大変申し訳ありませんが、ここにお書きになった内容がよく理解できません。読み方によっては、「ディズニーランドは、万人に平等であるというふりをして裏で優待利用というアンフェアな行為をやっている」のが知られてはまずいから、知らしめない、ということお考えのようにも読めますが?(まさか、と思いますが)でも、考えてみてください、他の理由ならいざ知らず、こと障害のある人を優待することが、アンフェアならば、「ハンディキャップ」の語源のとおり、ゴルフのハンディあげるのもアンフェアな行為ということになります。逆に日本的に真実を説明しないこと、すなわち不透明性ということ自体が往々にアンフェアと見られる土壌を有むのではないでしょうか?多少生意気ないいかたかも知れませんが、正しいことにはもっと自信をもって進まれたほうが今日的かつ貴園らしいと感じます。

> 大変お時間を頂戴いたしましたうえに明快な返答をお届できず、私共も歯がゆい思い
>でございますが、ウオルト・ディズニーの考えた「訪れる全ての人に幸福を感じてもら
>える場所」を目指し、これからも鋭意努力を重ねて参る所存でございますので、何卒ご
>理解を賜り、岡部様におかれましては今後ともますますのご支援の程、重ねてお願い申
>し上げます。
> 岡部様のご多幸とご健勝をお祈りし、略儀ながら、書中をもちまして返答とさせてい
>ただきます。

こちらこそ重ね重ねお礼申し上げます。まさしく、障害者も含め、「訪れる全ての人に幸福を感じてもらえる場所」になりますように…長文になりましたが、再度のご返事をお待ちもうしあげております・

皆様のご健勝と貴園のますますのご発展をお祈り申し上げております。

1999年3月20日

Enough For Today?(イナッフ・フォア・トウデイ?)
代表 岡部 耕典


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