【質問1】 夏目一郎のお母さんが病気になり,一郎の世話をする人がいなくなりました。そこで夏目さんの家族の方針で一郎を施設入所させることにしました。(今は措置入所ですから、夏目一郎の契約能力などは問題になりませんが、理論的な問題を知ってもらうための質問です)。 一郎自身が施設と入所契約をするのですか?それとも,父親の夏目太郎が契約をするのですか?誰が契約をするのですか? 【質問1に対する回答】 一郎君に意思能力がある場合。 @一郎君が単独で契約することはできます A保佐制度,補助制度を利用することで,保佐人,補助人が一郎君に代わって契約することはできます⇒代理権を保佐人、補助人に付与する。 一郎君に意思能力がない場合 「後見」を利用する 一郎君を被後見人(後見される人のこと)にし,後見人に選任された人が施設と入所契約をします。 父親の太郎さんが後見人に選任されたのなら,太郎さんが施設と契約をします(69頁参照)。 【回答1についての説明】 この質問1は,契約をするには,一定の能力が必要であることを理解してもらうための質問です(難しいので、11頁までは飛ばしても結構ですよ)。 【契約とはなにか】 契約とは,単なるお約束をいうのではありません。日常生活の中で、皆さんは様々な約束をしているでしょうが、約束の全てが法律などによって効果を生じさせるわけではありません。 私がこの書面で説明する契約は,とりあえず,日本の民法という法律が制度として,その契約の履行を担保する程度の内容を備えたものをいいます(例えば,請負契約とか,売買契約とか,委任契約とか,労働契約とか,運送契約とか,受信契約とか,民法自身が契約を予定しています)。 言い方を代えると,皆さんがその約束を守らなかった場合,道義的な意味で責任を取るだけではなく,法的な意味でも責任を取るべき義務を負う,そういう契約のことです。 道義的な責任とは,「あの人は約束をすぐ破る勝手な人」「もう仲間にはいれないでおこう」というような噂,ひそひそ話の対象に甘んじるという程度の責任のことです。 法的責任とは,契約の内容とおりのことを,裁判所は判決という形で公に宣言するし,更に進んで国家機関である裁判所が強制執行をしてくること,その結果,あなたは給料や不動産や動産を差押えられ生活に窮したり,場合によっては立退きを強制させられるという結果になること。労働契約に違反したことで場合によっては解雇されるということです。 【契約を構成するもの−意思表示について】(難しいところです) @、 あなたが市場に行ったと仮定します。魚屋の前に立ち,2000円と値段が表示された鯛を指さして,「その鯛頂戴」と魚屋のオヤジに声をかけました。魚屋のオヤジが「上質だよ」などといいながら,その鯛を紙で包み,はいと差し出します。そしてあなたは2000円を渡します。これはよくある風景です。これを契約という視点で説明をすると,次のようになります。 A、 あなたは,「今日は夫の誕生日だから,夫をお祝してあげよう。だから,奮発しよう」と考えたとします。これを動機といいます。「お祝をしよう」というのが高い鯛を購入する動機だということになります。そこで「鯛」を購入しようと思いました。これを表示意思といいます。そしてあなたは「その鯛頂戴」といいます。これを表示行為といいます。うーん,今までそんな難しいことを考えて買物をしたことはないと思うでしょうが,そんなものなのかくらいに飛ばし読みしてください。魚屋のオヤジに分かるのは「その鯛頂戴」という表示行為だけです。刺身にするのか,煮物にするのか,焼くのか,贈り物か,夫が食べるのか,妻が食べるのか,愛人が食べるのか,そういうことは「その鯛頂戴」からは分かりません。そしてそんなことは分からなくてもいいのです。「その鯛頂戴」という表示行為から,魚屋のオヤジが理解するのは「この人は2000円を払ってくれる。」ということです。魚屋のオヤジにとって大事なことは2000円で売れたということです。 B、 次に魚屋のオヤジが何故鯛を仕入れたのでしょうか。卸市場でいつもは入荷しない鯛を見たかも知れません。そして兆度受験シーズンなので,「おめでたい(鯛)」という言葉もあるから,受験生の親が購入するのじゃないかと考えたとします。そして値段も安めだから「これは売れる」と思ったとします。これが魚屋のオヤジさんの方の動機です。そして市場で卸値1,000円の鯛を20匹仕入れするためにセリ落したのです。セリで手や指で数字を示すことが表示行為です。そして購入して来ました。それから市場に並べる際,受験シーズンだから「2,000円でも売れる」と思うことが2,000円という値札をつける動機で,それで値札を2000円と表示します。これが表示行為です。あなたが見た値札はその値札です。魚屋のオヤジが受験生の体や受験生の意欲を心配する親に買ってもらおうと思っていても,そのような動機はあなたには関係がありません。あなたは夫を祝うために,2000円の鯛を購入しただけです。 【契約は意思の合致で成立する】 @ あなたは,魚屋の前で2000円と値札のある鯛を購入すると意思を示し,オヤジが「あいよ」といって新聞紙にでも包めば,これで契約は成立します。正確にいえば,あなたが「この鯛頂戴」と指をさした時点で契約は成立します。「2000円でその鯛を買う」というあなたの意思と,「2000円でその鯛を売る」というオヤジの意思が,合致するからです。ここでは「夫に食べさせたい」という動機,「受験生の親に買わせたい」という動機は問題になりません。勿論,魚屋のオヤジが「これは受験生のおまじないだ。受験生に買っていくのじゃないなら,売らない」と言えば,話は別かもしれませんが…。 A 上で説明した契約は売買契約のことです。契約が成立するのは,あなたとオヤジの双方の意思が合致した時です。そしてオヤジは魚を新聞紙に包み,あなたは財布から2000円を出す。これは契約を履行したに過ぎません。そしてこれで契約は終わりです。普通のケースではこれで契約上の権利,義務は終了です。 【契約不履行としての損害賠償責任】 しかし,もしその鯛が汚染されていて,食中毒になったとしたら,これはオヤジに対する損害賠償の問題になります(行政処罰もあります)。もしその2000円が偽札なら,オヤジはあなたに対し2000円を支払えといってきます(あなたが偽札と知っていれば刑事上の詐欺罪ですし,知らなければ代金の未払いに過ぎません)。この場合は契約は終わってはいない(不履行といいます)ことになります。 【契約は成立したが,有効でない場合もある―意思能力】 しかし,まだ考えなければならないことがあります。それは「その鯛頂戴」と言ったあなたに契約をする意思能力があるのかということです。 例えば,その日は土曜日だったとします。あなたは懇親会に出席をし,お酒を飲みました。懇親会の後,数人の知人と更に飲食をし,飲めないあなたは泥酔してしまいました。そして泥酔したあなたが鯛を購入したとします。この場合契約は成立(意思は合致している)していますが,有効ではないと考えることになります。 泥酔者というのは,自分が発言したこと,自分がしていることを覚えていないだけでなく,している最中さえ,何をしているかが分からないのが普通です。 ですから,泥酔者が「俺はタイヤキを全部買ってやる」「その酒全部買った」と叫んでも,その行為(意思表示のことで,全部買うと叫ぶこと)の結果(代金を支払うこと)を理解する能力はない訳ですから,契約は有効には成立しない=つまり,無効ということになります。 泥酔した人が,自分の発言に対し責任を持つことを期待などできない訳ですから,そういう人はそもそも契約の当事者から除外する必要があるとされているのです。 【意思能力とは,6歳〜7歳程度の精神能力のこと】 意思能力とは,自分の行為(意思表示)の結果を理解する精神能力です。 通常は6歳,7歳,8歳程度の精神能力だと言われています。昔の本には7歳〜12歳と記載されていましたが,東大の内田教授の本では6歳〜7歳となっています。勿論,取引行為の程度,複雑さなどによって,結果の重さ,責任の重さも違ってくるので,一概には言えません。 この6歳〜7歳程度の精神能力がない人は,契約の当事者にはなれません。つまり,契約をすることが出来ません。だから5歳の子どもは意思能力がないので契約をすることは出来ないし,痴呆が進行しなんでも「うんうん」としか言わないような人も意思能力はないということになります。 そして,夏目一郎君のような重度の知的障害者も意思能力はないということに理論上はなりえます。 【意思能力がないということは,立証を必要とします】 ところで,意思能力があるかどうかは,幼児や植物人間の場合を除けば,そんなに容易には分かりません。また裁判の場合,意思能力がなかったことを立証するのは,それを主張する側なのです。先ほどの鯛の話でいえば,あなたが泥酔だったことを立証することになります。立証というのはそんなに容易ではありません。泥酔の場合は特に困難です。何故なら,裁判の時のあなたは酒に酔ってはおらず,非常に常識的な人物だからです。 【行為能力という概念―立証を容易にするための技術―成年後見制度】 そこで,日本の民法は,意思能力の不存在の立証は困難なことから,行為能力という概念を更に設けました。 行為能力制度とは,本人保護の観点から,一定以下の能力しかない人を始めから取引社会への参加をさせない制度です。 成年後見制度の説明は,正確にいえば行為能力の問題であり,意思能力の問題ではありません。 行為能力の有無は,行為の度に証明するのではなく,予めその制度を利用した場合(被後見人,被保佐人,被補助人のこと,それと未成年者),その制度を利用しているということを示すだけで,その当該契約には関与できない人かそうでない人かが分かります。意思無能力はその都度証明するので大変なのですが,行為能力はその都度ではないので,取引には便利な規定なのです。 行為能力のない人のことを行為無能力者といい,未成年者,被後見人,被保佐人,被補助人のことをいいます。 しかし,行為能力がどれくらい無いのかは,程度によって異なります。 被後見人の場合は,殆どの場面で契約取引の当事者にはなれません(但し法律の規定によって日用品は購入できます)。逆に被補助人の場合は殆どの場面では契約の当事者になれます。被保佐人はその中間です。 成年後見制度を利用するというのは,行為能力を少し奪ったり,かなり奪ったり,たくさん奪ったりすることです。そして行為能力を奪う必要があるのは,意思能力が不十分だからです。自分の意思を適確に伝え,その義務を理解して行動できるのなら,行為能力を制限する必要はないのです。 【未成年後見―親が子どもの世話をする根拠です】 我が家の息子は9歳です。かなりの計算ができ,損得勘定も理解しています。しかし,彼が損得勘定ができるとしても,皆さんは「やはり子どもだから,責任を負担させるような契約はできないさ」と思うでしょ。そしてそれが妥当な判断ですよね。 9歳の息子は9歳という年齢の故に行為無能力者となります。 【成年後見―子どもが20歳になれば,親と対等です】 これに対して,成人になった知的障害者の場合は,知的障害者というだけで行為無能力者になるのではありません。成年後見制度を利用して初めて行為無能力者になります。 ですから,知的障害者の場合,未成年者の時は,それは知的障害者だからではなく未成年者という理由で行為無能力者なのですが,成人になった場合は,成年後見制度を利用して初めて行為無能力者になるのです。 後見の場合,後見人が被後見人に代わって意思表示(契約等)をします。 この場合後見人には代理権があるということになります。 行為無能力者の行為は「取消し」の対象になるのであって,無効なのではありません。でも取消しをすれば,無効と結果は同じになります。無効か取消しかは,議論のための概念ですから,皆さんが覚える実益はないと思います。 【裁判を無視してはいけません】 皆さんが「息子は意思無能力だから息子の行為は無効だ。弁護士の西村が,無効だということは裁判をしなくても始めから無効だと説明していた。形はあるが法的には何もないことだと教えてくれた。だから,息子があんたとしたという契約は無視する。」などとあなたが言っても,相手は裁判を起こすかも知れません。何故なら,裁判をする権利自体は全ての人(会社,法人)にあり,相手が証拠を持っていなくても裁判を起こすことはできますし,またでたらめな証拠でも裁判に提出することはできるからです。 【被後見人になっても,日用品は一人で買える】(ここは重要な部分) 但し,夏目一郎君が被後見人になっても,夏目一郎君は「日用品の購入その他日常生活関する行為」は一人でできる(民法9条但書)のです。 被後見人とは「事理を弁識する能力が欠く常況に在る」人のことです。「事理弁識する能力」とは意思能力のことをいいます。「常況」とは殆どいつもそうだという意味です。 つまり,被後見人とは日常的に殆ど意思無能力の状態にある人をいうのです。 しかし,パンとか,ジュースとか,お菓子とか,歯ブラシとか,ちり紙とか,パンツとか,靴下とか,鉛筆とか,シールとか,ワンカップとか,ビールとかは,被後見人となった重度の知的障害者でも,その売買契約は有効になります。 高村弁護士は「日用品の購入のような行為には高度な判断能力は要求されませんから,成年被後見人であっても,理解して購入することは可能です(理解可能性)。また,日用品のような行為は,仮に購入行為が失敗であっても,成年被後見人にとって特に不利益ではありません(不利益の軽微性)」と説明しています。 【意思無能力の例―脳血管障害の親父さんの例】 北大病院に脳血管の障害で「うん」しか言えないお父さんが,突然病室にやってきた綺麗な娘さんに「外車の契約書を示され,保証人欄に署名押印(自筆です)」をしました。その綺麗な若い女性が,どのような説明をして「うん」しか言えないお父さんに署名をさせたのか,それは不明です。 綺麗な若い女性は400万円の車を手にいれ,その後逃げました。それでクレジット会社が,自宅で療養している「うん」しか言えないお父さんに480万円(利息,手数料込み)を請求してきたという事案です。 私は北大の医者に,契約書を作成した当時のそのお父さんの意思能力について意見書を書いてもらいました。判断能力はまったくない(つまり,意思能力はない。自分が保証人欄に署名した結果どういう責任を負うのか理解不能ということ)という内容でした。クレジット会社は訴えを取下げて裁判は終了しました。 【まとめ】 以上のように,契約は,あなたと魚屋のオヤジの意思が合致すれば成立します。しかし,意思能力(行為の結果を理解する精神能力,有効に意志表示をする能力など,説明の仕方はいろいろある)がないと,契約は無効になります。また行為能力がないと,その契約は取消されます。 契約が無効になるとは,そもそも契約は始めからなかったということです。行為(意思表示)らしきことは確かにある訳ですが,しかし,それは法的にはなんらの保護もされないものとなります。 【裁判を起こされたら,いい弁護士をつけなさい】 勿論,契約をしたんじゃないかといって,裁判所に訴えを起こし強制執行をしてもらうことも出来ません。しかし,黙って無視していると大変なことになりますよ。 例えば北大病院の脳血管障害のお父さんのケースでは,クレジット会社は保証契約書を振りかざして裁判を起こしました。その結果介護で大変なお母さんと娘さんを地獄のような状態に落しいれるという効果は生じさせましたが,480万円という代金を回収することはできないことが明らかになったので,結局クレジット会社が裁判を取りやめました。その結果強制執行ができなくなったのです。 裁判を起こされたら弁護士に相談してください。 【成年後見制度―行為無能力者】 行為無能力者は,原則としては契約行為ができません(でも,被後見人,被保佐人,被補助人で程度が違う)。 原則というのは,一人で契約はできるが,後で取消されるという意味で「原則」です。だから取消しが無ければ有効のままです。それから,もっとも重い制度である後見を利用した被後見人でも単独で日用品を有効に購入できると規定されたので,被後見人の単独の契約が例外的に有効になることもあるからです。 【施設入所者のする契約は日用品の購入だけじゃないの?】 西村の理解では施設やグループホームで生活する知的障害者の場合,彼,彼女が契約をする場面はスーパーで食べ物を購入するくらいですから,殆どの場合,彼,彼女のする契約は有効だということになります。 取消されるような契約をする人は例外なのだということになります。しかし,施設入所契約という権利と義務がたくさん規定されている契約は,今のべた「原則として契約行為ができない」という方にあたります。 重度の知的障害者である夏目一郎君が,仮に意思能力が日常的にないとされた場合,一郎君は単独で契約行為ができないので施設を利用出来ません。そこで,誰かが後見人になって一郎君の代理人として契約行為をすることになります。 また一郎君は意思能力はあるけれど,「意思能力が著しく不十分」なので,複雑な契約をさせることは本人の利益にはならないと思われるのであれば,保佐制度を利用して,一郎君を被保佐人にし,誰かが保佐人になる必要があります。そして,裁判所で保佐人として代理権の付与(民法876条の4,1項)をして貰い,入所契約をします。 またIQは低いけれど,社会経験をしているのでいろいろなことは自分で判断できるが,「意思能力が不十分」なところもあるというなら,補助制度を利用できます。この場合,一郎君が契約をして,補助人がそれに同意を与えるとか,補助人が代理権を付与してもらって契約をし,一郎君が同意すれば,施設入所が出来ます。 法律の規定からすると,重度の知的障害者であっても,補助制度が使えないわけではないので、弁護士に相談してください。 【被後見人に代わって後見人が行為をする―代理権】 次に代理ということを簡単に説明します。 皆さんは,Aという人が何かをやらかしたとき,その責任は誰が負担すると考えますか。Aという他人が出鱈目な契約をして損害を出したとき,あなたがその弁償をすることになったら,あなたはどう思いますか。たまらん話ですよね。自分のした結果として自分が責任を負うというのが普通ですね。 ところが,あなたがAさんに代理権を与えていて,Aさんがあなたに代わって,ある取引をしたとします。その場合,Aさんはあなたの代理人として契約をするので,その契約の効果はすべてあなたに及びます。つまり,契約の結果儲かればあなたの収入が増えますが,契約の結果失敗すれば,損害を受けるのはあなたです。 代理というのは,このように他人に代わって行為(意思表示,契約)をした場合,その法的な効果をその他人に負わせる行為を言います。 【具体的な契約の仕方】 後見人,保佐人,補助人は,被後見人,被保佐人,被補助人のために契約などをするのですから,後見人らの意思表示の効果は,すべて被後見人らが負担します。ですから,一郎君が被後見人となり,父親の太郎さんが後見人になったと仮定した場合,施設利用契約の一方当事者は「夏目一郎後見人夏目太郎」となり,夏目一郎が使用料金などを払う(効果が一郎に及ぶので一郎が支払いという責任を負担する)ことになります。実際には夏目太郎が夏目一郎の預貯金通帳を管理している筈ですから,支払をするのは太郎(銀行振込の場合,一郎の預貯金通帳から口座引き落としになる)でしょうが,太郎のお金を使うわけではありません。一郎のお金を使うのです。 【弁護士に仕事を依頼すると、弁護士は依頼者の為に仕事をしますが、その場合は契約によって代理権が発生する】 弁護士が依頼者から金員を貰って裁判ができるのは,依頼者が弁護士に代理権を付与するからです。最近では野球選手が来期の給料を交渉する際,弁護士に依頼しますが,これも契約による代理権付与です。給料のことについて弁護士に交渉を代理させるのは何らおかしなことではありません。 【成年後見の場合―法定】 成年後見制度の場合,後見人は民法の規定によって代理権が付与されます。他方,保佐人と補助人は,裁判所の決定という手続を経て代理権を付与されます。代理権という権利が,他人の権利を左右することができる権利であることから,被後見人を支援する後見人の場合はなんでもありという感じで代理権を与えましたが,保佐人,補助人は,被保佐人,被補助人は意思能力がある人達ですから,代理権の内容は限定されます。 |