【質問6】 私は知的障害者の支援をしている者です。25歳の吉本雅夫さんは軽度の知的障害者です。障害年金(月7万円)を受給しています。また仕事に就いており,月額12万円の賃金を受けています。ところが,吉本雅夫さんと同居している,お母さんの吉本光子さんは吉本雅夫さんをサラ金に連れて行き,吉本雅夫さん名義で借入をさせました。全部で5社200万円です。吉本光子さんは46歳で仕事をしていません。今吉本雅夫さんの給料は差押えられています。会社は吉本雅夫さんに対し会社を退社して欲しいと言っています。吉本雅夫さんはサラ金で自分で署名をし押印をしたことは認めています。この場合,吉本雅夫さんの財産の保護や権利を守るためにどのようにすればいいのでしょうか? 【質問6に対する回答】 現在の問題を解決するためのアドバイス 1,破産か任意整理をする。 @、 任意整理とは,200万円の負債を整理することです。サラ金の金利は29%を超えていますから,弁護士に依頼をして利息制限法に基づいて金利を再計算してもらいます。 金銭借入の時期などが分かる書面があれば,弁護士はその書面を基に減額交渉を行い,3年程度の分割払いで支払をするようにします。 A、 破産ができるかどうかは微妙です。負債200万円。収入は19万円。男一人の生活費が仮に17万円とすると,返済費用は月2万円,5年間で120万円しか返済できません。だから,破産も不可能ではないでしょう。生活費が15万円なら,返済費用は4万円,1年間で48万円返済できるので,5年以内で返済できます。この場合は任意整理になるかも知れません。詳細は弁護士に相談してください。 B、 お問い合わせは,旭川弁護士会は0166‐51‐9527。札幌弁護士会は011‐281‐4823,函館弁護士会は0138‐41‐0232,釧路弁護士会は0154‐41‐0214にどうぞ。 C、 親の生活も見ているなら,破産以外には方法はないでしょうね。 2,生活寮,アパートでの1人暮らしを考える。 @ 吉本雅夫さん自身が親から離れられれば,十分生活はしていけます。そこで1の破産・任意整理をすると共に,生活寮・通勤寮・アパートでの生活を支援したらどうでしょう。 将来の問題についてのアドバイス 1,任意後見制度を利用する。 @軽度の知的障害者ですから,任意後見制度の利用を考えることはできます。福祉関係者が任意後見人になり,法律の専門家を任意後見監督人にします。お母さんの世話・支援は生活保護などでケアすれば十分です。そのよううなことが可能なら,後日任意後見制度を解消すればいいでしょう。 2,委任契約 契約です。私の場合は,支援者の方を入れて,3者契約(契約当事者として,依頼者,弁護士西村,支援者の3人がなる。)をします。それぞれがどういう権利と義務,責任を負担するかを記載します。 弁護士西村の場合,このような形の契約で500万円預ったり,2000万円管理したりしています。 * 最近新聞では,高齢者が福祉関係者を信頼して通帳など預けたら,知らないうちになくなっていたという事件を目にします。弁護士であれば,そういう犯罪行為に手を染める確立は低いです。 3,法定後見制度を利用する。 補助を利用すればいいと思います。補助者には支援者がなるか,弁護士がなることになります。保佐を利用すべきではないと思いますが,裁判所が知的障害者に理解がないので,軽度の人で50台の人などは申立の際,書面をしっかり作成した方がいいと思います。 4,権利擁護機関のサービスを利用する。 実際にはあまり役にたっていないようですが,仕組みとして存在しているので記載しました。詳細は社会福祉協議会に問い合わせをしてください。地域支援を謳っています。 5,お母さんとの同居を解消する。 アパート・生活寮・通勤寮での生活を継続しなさいということです。 6,お母さんの生活保証を考える。 やる気のないお母さんには,生活保護課へ話を回してください。心のゆとりがないのであれば,カウンセリングを紹介しましょう。パチンコにくるって,それで息子名義で借金を作ったのなら,とんでもないことです。そこをわかるように説明するのが先決です。 もし,パチンコなどで遊んでいたのであれば,生活保護を受けても,パチンコを続けると思いますが,それへの対応は役所に任せましょう。 民法には息子が親の世話をするという規定もありますが,まず,息子は息子自身の人生を歩く権利がありますのから,母親の世話はその後に考えましょう。 1、 上のような質問は,地域生活を送っている知的障害者にはかなりある相談です。この通信を読まれている親の場合にはそういう問題はありませんが,障害児をずっと児童施設にいれておいて,20歳になった時点で引きとって,その障害者の年金を当てにして生活費・遊興費に費消する親もかなりたくさんいます。 2、 親子の問題だから関わりの持ち方は簡単ではないのですが,親と子は一体ではないので,それぞれの最善の利益を図ってください。その場合,まず障害者の権利を関係者が勉強をし,その権利の擁護に何をすることができるかを学習してください。たくさんの選択肢がありますから,それぞれの選択肢のポイント・ウイークポイントを理解してください。「弁護士さん,お任せ!」これが1番駄目です。でも,弁護士西村の経験では,これが1番多いですね。 3、 親の老後は様々です。親子の関係も様々です。しかし,親が子どもを食い物にしてはいけません。権利侵害は刑事犯罪だというくらい,親に勉強して欲しいところです(まず,養護学校の先生も勉強しないと駄目だし,教育委員会も障害児に対する特別のケアの必要性を学習しないと駄目。学習しないということは放置・無視・義務不履行で訴えるべきです。東京のある区の親が教育委員会のあり方を問題にして東京弁護士会の人権擁護委員会に申立をしています。 |