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心のバリアフリー市民会議
第四回 心のバリアフリー市民会議 実施報告 |
amの第2期総会で承認されたシンボルマーク |
実施日時 2001年5月12日(土曜日) 場所 成蹊大学 大学5号館 102教室 主催 心のバリアフリー市民会議 共催 武蔵野市民社会福祉協議会 プログラム *基調講演 + Q&Aタイム 参加者 約70名 *語ろう会 参加者 約30名 |
<講演 「心のバリアフリーを考える−踏み出そう知識から行動へ−> 東洋英和女学院大学教授 石渡和実氏 講演には、約70名を超えるみなさんが熱心に参加されました。石渡先生の単に学問としてだけでは なく、ご自身の活動を通じてのお話はとても訴えかけるものが大きく印象深い講演になりました。 石渡和実氏 −東洋英和女学院大学人間科学部人間福祉学科教授 東京教育大学教育学部卒。同大学教育学研究科修士課程修了。筑波大学大学院心身障害研究科博士 課程単位取得。埼玉県、横浜市のリハビリテーションセンター勤務にて障害がある人の進路、就労 などについての相談を担当。関東学院大学助教授を経て、現在「湘南福祉ネットワーク」「横浜福 祉ネットワーク」のオンブズマンとして障害がある人のおもいを受けとめ、これらのサービスの在 り方を検討中。 1.「障害」、バリアとはなにか− (1)従来の心理学による「障害」では、分布の偏りで見て少数派、それも人間の適応にとっての マイナスを価値尺度としている。しかし、この価値尺度は絶対的な概念ではなく、時代・場所 によって変わるものである。 (2)日本語の「障害」、「障害者」ということばは明治以降から使われているが、それまでは 「不具・廃疾・片輪・欠陥」などの差別用語が使われていた。「障碍」(さまたげ、本人が困 っている)ということばが出てきたが浸透しなかった。上田敏氏は障害を「疾患によって起こ った生活上の困難・不自由・不利益」として定義し、いかにマイナスイメージを払拭しプラス のイメージに変化させるかが重要と著書の中で述べている。 (3)新しい障害者観として日本では「障害」について“それは「個性」である”に変わってきた。 英語の「障害者」の表記も変わった。 [disabled persons]→[persons with disabilities] 心のバリアフリーには、同じ時代に同じ地域で暮らす同じ人間という気持ちが必要である。 (4)バリアフリーとは、障害者や高齢者が生活していく上で、「障壁(バリア)」となるものを取 り除くことである。「バリアフリー社会」とは−高齢者も障害者も、こどもも病人もだれもが 暮らし易い社会であり、ノーマライゼーション社会と同じことをさす。障害者を取り巻く4つ のバリアとは、1.物理的障壁、2.制度的障壁、3.文化情報面の障壁、4.意識上の障壁 で、この4番目の差別、偏見など障害者に冷たい社会が生む「無知」からくる否定、つまり、 心のバリアをなくすための障害者観の変化のため、高齢者・障害者への配慮、思いやり、気軽 な声かけ・支援、福祉教育の重要性が出てきた。 2.障害者自身の前向きな「障害」のとらえ方 (1)「精神障害」の概念の変化があった。近年の「精神障害」の概念では、疾患と障害が振幅を持 ちながら共存する「揺れる障害」と考え、治安モデル、医療モデル、福祉(生活)モデルを対 応の区分けしてとらえている。「精神障害」当事者の認識についても、“こころを病む”こと が決してダメなものでない。「治る」とういうことはこの病をもったままの自分を認めて新し い生き方、新しい自分を見つけ出すこと「障害の受容」である。援助者のあり方の共通的理解 としては、相手の立場に立つ、ありのまま間のその人を受け入れることであり、これが援助の 出発点になる。 (2)「五体不満足」の著者・乙武氏の声でも「心のバリアフリー」を強調し、必要なのは他人を認 めるこころであり、障害者のようなマイノリテイに対しても、多様性という観点から障害を その人の特徴として受け入れ、誰にも「その人しかできないこと」があるという想いをもつ事 だと訴えている。 3.バリアフリーの実現と「福祉のまちづくり」 「福祉のまちづくり」にはハードとソフト両面の整備が必要だが、ソフトでハードを十分にカバー することは可能。「まちづくり」は「人づくり」であり、「人づくり」のための福祉教育が必要 になる。 「福祉のまちづくり」の過程は住民の福祉教育の過程である。 「東京都における総合的な福祉のまちづくりの推進について」(1986:福祉のまちづくり東京都 懇談会)や「横浜市の福祉のまちづくり条例」(1997)があり、また、横浜市福祉のまちづくり の推進会議(1998)などの例があり、「福祉のまちづくり読本」の作成、障害者・高齢者との 体験・交流など、「差別意識の克服」の為の講座を障害団体などと連携して地域で進めている。 そこでは障害のある方たちが引っぱって行っている。 4.バリアフリーを実現するためのボランテイア活動 (1)新しいボランテイアの定義として金子郁容氏は“社会を多様で豊かなものにする、新しいもの の見方と新しい価値を発見するための人々の行動原理”と表現している。また、他に“市民の 個々の「思い」や「関心」から社会にある諸課題に自分の時間を提供し、労働の対価を目的に せず取り組む活動”との定義もある。 「ボランテイア活動の4原則」(東京ボランテイアセンター:1996)では1.自主性・主体性、 2.社会性・連帯性、3.無償性・無給性、4.創造性・開拓性・先駆性が要求されると言っ ている。 (2)障害者自身のボランテイア活動と3つの変化とは、まず障害者自身が変わる、そして共に活動 にかかわる障害のない人が変わる、さらに社会が変わる、ことである。地域が変わる大きな パワーである。 (3)ボランテイア活動における「ささえあい(interdependence)」の考え方は、自主独立でもな く依存でもなく、相互依存の考え方。 「ささえる」ことの原則→「援助・相談」の原則。この「ささえあい」があってお互いがより よく生きていける。「共に生きる」を実践する中で、学んでいくことが新しい価値観、新しい 社会の構築につながる。 5.バリアフリーとノーマライゼーション (1)福祉文化の創造「これまでの経済効率のみを追及する考え方から、人間性の尊重を基本とした 考え方に改めていくことが必要。そのような新しい価値観・人間観を形成するには、障害者 自身が豊かに生きている姿を幼少時から見聞きし、相互の交流、理解を促進する為の福祉教育 を推進していくことが必要」 (2)福祉コミュニテイの形成「障害者や高齢者を地域から隔離することなく、地域でともに生きて いく社会をつくるためには、住民の社会福祉意識を改善し、福祉コミュニテイを形成すること が必要。戦前の富国強兵や戦後の経済成長の下で蓄積された、競争で勝ち抜く事や速いことが いいことだという価値観を問い直し、新しい人間観・社会観を確立しなければならない」 そのあと全盲の少年をテーマにしたビデオの上映がありました。 ストーリーとしては共に学ぶ生徒たちが、全盲の生徒と一緒に学び生活していくための方法を話し合 い、作戦を立て、運動会の時には徒競走をする為に全盲の少年の前で声を発しながらリードし、練習 に練習を重ね本番で全力で走り抜きました。その後少年は、英語の弁論大会で優勝するなど、優れた 能力を発揮し、母親の絶大なる支援のもと点字による試験勉強により、東大受験→合格しました。 まさにささえあい、回りの人たちも勇気づけられ、「共に生きる」ということばを越えた コミュニテイ社会を垣間見ることのできるビデオでした。 |
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講演撮影 |
<語ろう会> 語ろう会は当初3グループに分かれ、場所を8号館の教室に移して開く予定でしたが、全体に予定時 間がシフトしたことと、石渡先生を全員で囲んでの語ろう会の方が、講演/Q&Aを通した感想から より望ましいとの判断から、講演会場の場所のままで、開きました。 参加者が、それぞれ講演の感想を述べあったり、新たな質問をして石渡先生からお答えいただいたり しました。その中で、障害当事者の方が「講演内容に共感した、思っていること/実感していること と同じだった」とおっしゃっていたことがとても印象に残っており、石渡先生に感謝すると同時に、 今回の市民会議が成功したとの思いを強くしました。 |