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< 講演レジメ >  


東京都の福祉改革 ―「地域での自立を支える新しい福祉」を目指して―

東京都福祉局障害福祉部長  橋 義 人

1.福祉の現場でのささやかな経験から
 ○約20年ぶりに、福祉の現場に戻って
 ○入所施設の利用者、地域社会との関係
 ○その人なりの自立した暮らしの実現のために
 ○現場の実践の中から教えられたこと

2.「福祉改革ビジョン」(平11.12、介護保険導入直前)そして「福祉改革
推進プラン」(平12.12)策定まで
 ○日本の福祉の戦後史を総括 → 日本の福祉制度が直面した「限界を分析」
   → 既存の「福祉」からブレークスルー(突破)していく → そのためには、
   従前のシステムを根本から再構築し、利用者本位を徹底する「福祉改革
   の実行が不可欠」→ ここまでは基礎的な構造改革の考え方と基本的には
   共通 → しかし、措置から契約へとはいってもサービスの供給のしくみ、
   総量はほとんど変わらない → 大都市東京の実情、都民ニーズに合わない
   → 都は「利用者が選択・利用する在宅サービス中心の福祉」に大転換
   (平11.12福祉改革ビジョン)の大方針を決定 → 行政と社福法人でクロー
   ズされた世界を変革し、歴史的視点に立って、利用者ニーズに的確かつ
   効率的に応えることのできる、新しい福祉を構築する流れを、国に先行
   して東京から発信していく(福祉改革推進プランの戦略)

3.福祉改革推進プラン(福祉改革STEP1)
(1)利用者志向の「開かれた福祉」 ― 改革の真意 ―
 @本当の意味での利用者本位を実現していく → 利用者の視点から見た福祉
   サービス供給システムの改革を進める
 A競い合いを徹底し、努力する者が報われる社会をつくる
 Bインフラ整備や利用者保護など、行政が果たすべき役割については貫徹
   していく
(2)3つのキーワード「選択」・「競い合い」・「地域」
(3)12の戦略プロジェクト → 「障害者の多様な暮らしの為のインフラ整備」
               ※心身障害者施設緊急整備3カ年計画(13〜15年度)
(4)従来の行政プランと決定的に違う点
 @これまでの福祉の世界を根本的に利用者本位の世界に変える
 A既存の施策体系や執行体制を抜本的かつ具体的に変える
 Bあと戻りしないしくみをつくる

4.福祉改革STEP2 ―「地域での自立を支える新しい福祉」を目指して ―
(1)STEP1で示した理念と方向性を、各分野ごとにさらに発展・進化
  → サービス提供のスタイルの改革を柱に、都立のありようも含めて社会
  福祉法人に代表される既存の福祉サービスの担い手の改革方針と実行に
  移すための具体的な戦略を明らかにした。
(2)2つのコンセプト ―「現状」→「国の対応」→「都の考え方」と対比 ―
  @これまでの重装備の施設偏重の福祉を改革 → グループ・ホームなど
    地域の住まいを重視した方向に転換 → いわば「脱・施設宣言」
  Aサービス供給主体の改革 → 多様な供給主体の参入促進
                               :イコール・フッティング
  (対等の立場)での競い合い、選択を支える評価や情報提供のしくみの構築
(3)地域での自立を支える新しい福祉の体系
  「目指すべき将来像」→「中期的目標」→ 「14年度の展開」
               「14年度の展開」←「分野別事業計画」
  〈障害を持つ人が可能な限り地域で自立して生活できる社会を築く〉
 @親元や入所施設から、地域で自立した生活に移行しようとする障害者
   へのサポートを充実する
 A生活寮など地域の居住の場を大幅に増設するとともに、障害者の自立
   した地域生活を支えるネットワークの構築
(4)利用者が自ら必要なサービスを安心して「選択」できるしくみを築く
 @都独自の第3者による評価のしくみを構築、A総合的な情報提供のしくみ
   を構築、 B苦情や権利侵害の相談等の体制を整備
(5)社会福祉法人改革と都立施設改革等
 @多様な供給主体の参入を促進(都独自の規制緩和を促進、福祉NPOを支援
   など)
 A社会福祉法人の経営改革(競い合いの促進、経営改革の支援、都施策の
   再構築)
 B地域で多様な住まいやサービスを提供する基盤を築く(暮らしの福祉イン
   フラ緊急整備事業、心身障害者施設緊急整備3カ年計画など)
 C都立福祉施設の抜本的改革
   施設規模や待機者の解消状況を考慮しながら、段階的な民間移譲等を
   視野に入れて、抜本的な改革を進める → 主眼は「民間でできること
   は民間に任せる」→ 今後早急 に具体的な方針を定める。
 DSTEP2の実行に向けた当面の取り組み

5.利用者本位の支援費制度の実現を目指して
(1)支援費制度とは(施設サービスや居宅サービスを利用する場合)
 @これまでのような、事業者への財政支援ではなく、利用者の選択により、
   利用者個人に財政支援 → 本質的な変化は「個人給付」
 A社会保険方式ではなく、税方式による社会援助 − 応能負担による費用
   徴収 → 措置から継承される側面
 ○支 援 費=区市町村が定めるサービス基準額−応能負担による利用者
                                           負担額
 ※代理受領 ※1.サービスの種類ごと ※1.サービスの種類ごとの応能負担
         ※2.国基準を下回らない ※2.利用者から事業者へ支払い
         ※3.区市町村が定める基準
 Bサービスを利用する利用者へのバックアップシステム
   権利擁護システム、サービス評価システム、情報提供、ケア・マネージ
   メントなど
 Cインフラ整備を含め、これらの全てが、自治事務として区市町村の責務
   となる
 D東京都は何をするのか
   区市町村支援、広報、事業者指定、その他
(2)制度がめざすもの
 @利用者が身近な地域で自分に合ったサービスを選択し、利用できるよう
   にする
 A事業者は利用者に選ばれることで、サービスを提供する事業者に競い合
   いが生まれ、サービスの質の向上が期待される
(3)国はどこまで、どれだけ、地域サービスへ財政のフレームを転換するか
 @支援費の総額、施設と在宅の総枠が変わるか?
 Aサービスの供給構造が変わるか?
(4)都は、国制度改革がどうなろうとも、「障害をもつ人が可能な限り、地域
  で自立して生活できる社会を築く」(福祉改革STEP2)

6.「利用者本位」という、あたり前の社会を共につくるために
(1)予想されるさまざまなハードル
   根強い施設信仰、サービスを供給する法人・事業者の問題、地域の理解
   と協力、既得権益、親亡きあと、行政の理解不足・タテ割りの弊害、
   利用者の側の権利と義務、自治体行財政への理解不足、さまざまな
   バリアー(心の、情報の、まちの)、福祉労働者の権利と義務、新しい
   需要(福祉、医療、環境など)構造に対応できる供給構造、などなど

ex1.障害の種別を超え、連携し、法人化 → 利用者かつサービスの担い手
ex2.通所中心で、地域自立のネットワークづくり
ex3.通所より、小学校区単位のデイ・サービスへ
ex4.民生委員、町会、学校、医師、NPO等とのネットワークづくり
ex5.環境問題と福祉をつなぐNPO
ex6.自治体の財政事情を理解すること
ex7.自治体の悩み、本音を理解すること
ex8.その他

(2)東京という大都市ゆえの特性、可能性

(3)共に、同じ市民として、地域社会に貢献すること

(4)実践の中から、新しい福祉の世界を、共に創造していこう


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