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当事者支援の制度をめざして!! たこの木通信229号(2006年11月20日) 岩橋 誠治 【新たな闘いに向けて】 障害者自立阻害法と言われ、10月31日の「10・31大フォーラム」で同法に反対する抗議集会並びにデモに15000人が集まり、多くの当事者や支援者の生活を不安のどん底へと 追いやろうとしている障害者自立支援法。正直この間の闘いを私は敗北と位置づける。 間近に迫った07年度予算の攻防や3年後の介護保険との統合と行政交渉の闘いがまだある ものの、目の前にいる当事者の暮らしは、日々待ったなしであり、交渉事で開けるもの ばかりではない。私としては自立支援法に関する闘いは一旦横に置き、法律によって新たに定められた制度をどうに活用し当事者の真の自立生活を支援するかをここで書いてみたい。 新たにはじまった制度は、霞ヶ関の高いビルの中で夜を徹して作られた法律ではあるが、目の前で座り込みをする当事者を見ず、机上で作られたものでしかない。私たちは今後、 目の前にいる当事者の生活を実際支援する中で、霞ヶ関より低い建物の中に入り、市職員と当事者・支援者の生活支援について交渉していく必要がある。 そのためには、まったく持って許しがたい新しい制度ではあるが、つじつまの合わない法律によって枠付けされた制度の隙間を縫い、再び枠を取り除くために制度を使いこなす 必要がある。そして、枠からはみ出る当事者の実際の生活や制度利用の実態を通じて、真の自立支援を勝ち取る闘いへと向かっていきたいと思う。 そのためには、地元では制度の横出し立て出しを勝ち取る交渉を続け、他の地域で勝ち 取った情報を共有することで、再び当事者が利用できる制度へと変えていきたいと願う。 【多摩市障がい福祉サービス支給決定基準要領が出される】 この間ドタバタしていたが、行政はなんだかんだと新制度の枠組みを整えつつある。この間の市行政と攻防の結果、かろうじて踏みとどまったものもあれば、見落としの結果国に されるがまま進められてしまった事柄もある。実際制度がどのようになったのか?改めて まとめてみたい。但し法律に定められた制度の枠は、多岐に渡る障がい当事者の生活を 様々なところで輪切りにし作られたため、そのすべてを理解している人はいないだろう。 私としては今目の前にいる当事者に関わることを書くので、不足する分はぜひ皆様からの 情報が集まることを期待している。 まず、自立生活をする当事者にとって一番必要な事は日々の生活における介助である。 グループホームと言う枠もあるがそれはいづれ他の人に語ってもらうとして、ここでは居宅介護について10月以降どうなったのかをまとめてみたい。 @居宅介護等 10月以降国の義務的経費の範囲として「居宅介護・行動援護・重度訪問介護・重度障害者等包括支援及び短期入所」が定められ、ガイヘル(移動介護)は地域支援事業と言う事で 市の裁量でまかなわれる事となった。 義務的経費とは、どのように利用が増えたとしても国はその費用を負担すると言うものである。支援費制度時代「本人の必要に応じたサービス」を市も目指していたのだから、その延長に義務として国が支援を担うというのは良いことのように思う。しかし、それは今までの方向性とはまるで逆で、当事者の能力を測り能力に応じた負担に対して義務を負うというものであるため、国が必要と認めないお金に義務を負わないということになる。 では、どのようにどこまでの義務を負っているかといえば、障がい者を区分し月あたりの国庫負担金額を決め、そのお金を使って様々なサービスを使う形になっている。その額は もし一番単価の低い家事支援で行ったとしたら約125時間/月、身体介護ですべて使ったとしたら48時間/月になる額である。家事で一日4時間程度である。それは最重度に位置づけられた人の額であり、それよりも低い区分の人はさらに低い額になる。 区分認定によって国庫負担金が決まるが、実際の支給については各市区が支給決定基準を定め支給量を決定する事になる。これまでは、実際に必要とする支援が月にどれだけ必要かで決められてきたが、今後は支給額をどのように使うかと言う形になっている。 しかし、東京の場合はすでに国庫負担金を上回る支給を行っているため、すべての人が ばっさりと切られてしまうことになる。そこで多摩市や近隣各市は、「個別の事情」と言う 枠を設け国庫負担額を基準にし、その1.5倍までを認めると言う事にした。それで、現在 受給されている人たちの80%をカバーできるらしい。(多摩市係長談) では、残りの20%の人はどうなるのか?これまで厚労省を相手に声をあげている人の ほとんどがこの20%の中に入るわけだから、「1.5倍しました。はいそうですか」と言うわけにはいかない。そこで各市は、「特別な事情」と言う枠を設け、1.5倍を超える人については「障害程度判定審査会の意見を聞いた上で、支給を決定する」と言う枠を設けた。 しかし、この枠を設けた市の本音は、「特別な事情とは、すでに支給している人」であって、既得権を認めれば障がい者や支援者は納得するだろうという姑息な枠なのである。そして これをそのまま認めれば、現在支給されている人とこれから自立生活者を始める人を 分断する結果を招く事は他市の状況を見れば明らかで、この間の攻防では「特別な事情」が決して既得権益を保障しろと言っているのではないことにこだわってきた。 そして出来上がった多摩市の支給決定基準要領は、「特別な事情」の欄に「障がい者個々の生活実態に応じて、前条(1.5倍)を超える要望がある場合で…」という一文を入れた。 私たちはすでに支給されている人ではなく、今回の支給決定は個々の生活実態に応じたものであることを市が認めている形をつくり、次に続く人たちも同様の生活実態があれば同様の支給を行う道を開いたと思っている。(実際これから自立生活を始める人が現れたときにその実態が明らかになると考えているから) 又、個々のサービス内容については、「上限」と表記をなくし「目安」とか「基準」という言葉に置き換え生活に即した支給がされるようにした。 さらに、行動援護という新たなサービスについては、実施できる事業所が少なく支給は あっても利用ができないという実態を、行動援護の支給決定の中に「資格要件を整えた事業所と契約できる事。契約できない場合は居宅介護(身体介護)において決定する」と言う文で表した。そして口頭ではあるが、この場合の身体介護は制度上の名称であって実際には 移動介護に使える事も確認した。 又、通院介助はこれまで移動介護の枠であったが、新たに居宅介護の中に位置づけられ、定期的に通う病院については居宅介護で支給されるようになった。 いろいろ攻防を重ねてきたが、詳細を見ると実際の生活にそぐわない事柄が数多く出て くる。今後は、実際の生活の中からこの基準の不具合を指摘し、より当事者の生活実態に 即した基準にしていきたいと思う。他市の皆さんからの情報をお待ちしています。 |
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