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1−7−Z−2 移動外出支援                岡部耕典(発達障害者白書2006)


 平成15年4月の支援費制度の開始によって、自治体単独事業であった知的障害者・児のガイドヘルプ(移動介護)は初めて国制度として居宅介護支援の類型に位置付けられることとなった。普段作業所等で経験している集団での外出とは異なり、ガイドヘルパーが一対一で利用者に対応するガイドヘルプにおいては、利用者個人個人の主体性が最大限に尊重されるため、当事者にも家族にも極めて好評で、「知的障害者・児の地域生活支援」の象徴的サービスとして、その利用は全国的に広がり、利用時間も飛躍的に拡大していった。

 しかし、平成17年の通常国会に上程されている障害者自立支援法案では、平成18年10月をもって、知的障害のみならず身体障害(視覚障害及び肢体不自由)を含む全てのガイドヘルプの制度がなくなり、市町村が独自に実施する事業費補助事業である地域生活支援事業のひとつである「移動支援事業」をもって代替されるという方針が示された。

 同法案における地域生活支援事業とは、支援費制度のような個別給付ではなく、市町村がおこなう事業費補助事業であり、このため、移動外出支援が必要な利用者の利用が担保されているとは言いがたく、また、事業委託の決定権は市町村がもつ以上、これまで地域で実際にガイドヘルプをおこなっていた居宅介護支援事業所が受託するとも限らない。加えて、国庫負担も義務的経費ではなく、将来の一般財源化も示唆されていることから、知的障害者・児の社会参加保障と居宅介護事業の存続を不安視する声が一気に高まっている。

 このようにガイドヘルプを地域生活支援事業に転換させることについては、表向きは、市町村の裁量を尊重し、地域の実情に応じたサービスを提供するためと説明されている。しかし、実際は、利用が大幅に伸びたガイドヘルプに対する国庫負担を今後は一定程度に抑制し、かつ、将来的に介護保険制度と障害保健福祉制度を統合することへ向けての布石として、社会参加という現在の介護保険制度になじみにくい便宜を図る類型であるガイドヘルプを個別給付からはずしたのではないかという観測が強くある。

 一方で、平成17年4月からは、自立支援法案を先取りするかたちで、知的障害者・児の「外出時及び外出の前後」における居宅介護として、「行動援護」という新類型が開始された。しかし、この類型が利用できる対象者は極めて限定され、また、厳しい資格要件が課せられているため、対応できる事業所やヘルパーも限られているなど、多くの問題を抱えており、ガイドヘルプの代替とはならない。(詳しくは、「ホームヘルプ」を参照のこと)

 「ガイドヘルプの利用が爆発的に増えている」といっても、平成15年度の全国総支給決定時間数を療育手帳所持者で割ってみると、わずか151時間、つまり1ヵ月1時間強でしかなかった、という調査もある。
(注1)拙速な制度変更をおこなうのではなく、知的障害者・児の地域生活支援の要として、ガイドヘルプをこれまでどおり個別給付として存続させ、さらに発展させる方策が求められているといえよう。

(注1)コミュニティサポート研究所調べ

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