5-3 当事者のニーズに応えた支援を
武蔵野市障害者総合センターデイセンター山びこ 安藤真洋
1 市場
介護保険が導入される時に「4兆円市場」という言い方がなされ、民間活力の導入、民営化がしきりにいいこととして説明されていました。よりよいサービスを提供するには規制緩和し「民」の力を活用しようということだったと思います。「社会保障分野における擬似市場化は世界経済における規制緩和の圧倒的な潮流のなかで、先進国の間では程度の差こそあれ避けられない選択肢となっている」(冷水豊‐上智大学 「月間福祉」00年)というわけです。そういった背景の中で、介護保険においては要介護認定された高齢者自身が主体である事が強調されていました。高齢者はサービスを買う当事者、すなわちお客様(消費者)ということになります。このことはあたりまえのことですが重要な点でした。総体的な国の構造改革政策の中で、これからはこの理念を実践化していかなくてはなりません。
2 当事者の保護は・・
介護保険のもとでは「従来サービス利用から遠ざけられてきた中間所得層以上の階層にサービス利用を一気に拡大するが、他方で、年金、医療の保険と同様、保険料や利用者負担の支払い困難な低所得層を取り残していく点で新たな選別を生む」(冷水豊)ことが懸念されています。市場化したところではいわゆる競争原理が生まれ、サービスは向上するとされていますが、「新たな選別」の問題も含めこれからは消費者保護が重要になります。今用意されているのは成年後見制度であり地域福祉権利擁護事業等なのですがこれも実際に使う上ではさまざまな問題があります。消費者である当事者の保護は不十分なのが現状なのです。
3 措置から契約へ
急ピッチで進められてきた障害分野での構造改革、すなわち社会福祉基礎構造改革の中心は利用契約制度への転換です。戦後50年にわたって続いてきた措置制度は戦後の混乱期には必要な制度であったわけですが、この制度はいわば行政処分(行政の職権による一方的な保護施策)とされるものでそこに当事者の希望や決定は認められていないというものでした。それを「個人が尊厳をもってその人らしい自立した生活が送れるように支える」という理念のもと利用契約制度に変わる(2003年度)ことになります。大雑把な言い方をすれば介護保険のような形になるわけです。(制度的にもいずれ障害分野も介護保険制度に合流することになると言われています)
4 支援の方向
今の山びこなどの通所施設では介護だけをしているのではありません。山びこでは、様々な活動(働くことも含む)を通して利用者の方々一人ひとりが充実して過ごし、社会参加、自己実現できるよう支援することを目的としています。(実際にどれだけ出来ているかはこの際脇においておきますが・・)多くの施設もそうではないかと思いますが、今後はより当事者本人のニーズに即したサービスの提供が求められます。当事者本人の意思や決定を尊重した支援と言うことです。
支援には二つの柱があると思います。一つはその人の思いや願いが実現できるようなサービスの提供、もう一つは当事者の権利の擁護です。
5 地域のなかで
これまでは施設という箱を前提にしたサービス(プログラムモデル)でしたが、これからは非定型のさまざまなサービスに施設も取り組まねばならないと思います。コミュニティの一員としての当事者の暮らしを支えるサービスが必要です。その点では相互に提携・連携するなど、様々な形で地域社会の中での施設のありかたが問われてくることになります。